再生医療を在宅医療で提供できる?導入可能な自由診療メニューと注意点を解説

「再生医療を在宅医療で提供したいのですが、対応できませんか?」

再生医療導入支援のコンサルタントとして活動する中で、在宅医療を提供する医師や医療法人の方々から、最近このようなご相談をいただく機会が増えてきました。

高齢化が急速に進む日本において、医療機関が在宅医療の中で再生医療を提供できないかと検討するのは、自然な流れと言えるでしょう。

先ず、結論から申し上げると、在宅医療においても、再生医療関連のメニューの提供は可能です。

しかし、PRP療法や幹細胞治療といった多くの再生医療は、厚生労働省への提供計画の届出に加えて、適切な設備や清潔環境、厳格な記録体制などが求められます。そのため、患者さんのご自宅で再生医療の法令に基づくPRP治療・幹細胞治療を提供するのは現実的には困難です。

こうした背景の中、近年注目を集めているのが、「細胞加工物」に該当しない自由診療の選択肢です。これらは、一部の訪問診療クリニックや美容医療事業者の間で、在宅での提供がすでに始まっているものもあります。

では、在宅医療の現場で提供できる「再生医療に関連する自由診療メニュー」には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

本記事では、そうした「再生医療に関連する自由診療メニュー」のうち、在宅医療の枠組みでも導入可能な治療法について解説し、今後の展望や導入時の注意点も紹介します。

目次

在宅医療で提供できる『再生医療関連メニュー』とは

先に述べた通り、一般的な再生医療等技術を患者さんのご自宅で実施するのは現実的に困難です。

一方で、「再生医療に関連する自由診療メニュー」の中には、再生医療等安全性確保法に基づく届出や特定の施設要件を必要とせず、医師が訪問して施術することで在宅医療の枠組みでも提供できる治療メニューがあります。

ここでは、その代表的な例を二つご紹介します。

PRP-FD(フリーズドライ化された自己血由来成分)

PRP-FDは、患者さん自身の血液から、組織の修復や再生を促す成長因子やサイトカインだけを抽出し、それをフリーズドライ(凍結乾燥)加工したものです。

細胞(血小板)を含むPRPは「細胞加工物」に該当しますが、血小板を取り除いたPRP-FDは、再生医療等安全性確保法で定義される「細胞加工物を用いる医療技術」には該当しません。

この特性から、PRP-FDを在宅医療として提供する医療機関が、少しずつですが増えてきています。

一般的に、PRP-FDは以下のような流れで提供されます。

一般的な提供の流れ

  1. 採血
     患者本人の血液を一定量(例:20〜60mL程度)採取します。
  2. 加工(分離・濃縮・凍結乾燥)
     採取した血液から多血小板血漿(PRP)を分離・濃縮し、それを専用の施設でフリーズドライ(凍結乾燥)処理します。この加工は外部の委託施設(メーカー)に送付し、実施します。
  3. 保管・納品
     フリーズドライ化されたPRP製剤(粉末)は、室温または冷所で保管可能となり、長期保存や持ち運びがしやすくなります。
  4. 施術(注射)
     治療当日は、フリーズドライ製剤を生理食塩水などで溶解し、注射や点滴などの形で投与します。
     

PRP-FDは、「事前採血 → 委託加工 → 注射のみで施術完了」という流れで提供できるため、医師の在宅訪問で完結できる自由診療メニューとして注目されているのです。

また、製剤の保存性・携帯性が高く、特別な設備を必要としない点も、高齢者施設や自宅での治療に適している理由の一つです。

しかし、PRP-FDは注目されている一方で、施術に際しては注意すべき点もあります。

PRP-FDは自由診療であるものの、採血や注射を伴う医療行為である以上、十分な感染対策や患者ごとの健康状態の把握が欠かせません。

また、製剤の品質や取り扱いにはメーカーごとの差もあるため、信頼できる製造元を選ぶこと、施術にあたる医師が適切な知識と経験を持っていることが重要です。

幹細胞培養上清液の点滴・注射

幹細胞培養上清液(かんさいぼうばいようじょうせいえき)は、ヒト由来の幹細胞を培養する過程で得られる培養液から、幹細胞そのものを除去した上澄み部分です。

この上清液には、成長因子やサイトカイン、エクソソームなど、細胞の修復や再生を促すさまざまな生理活性物質が含まれており、医療や美容の自由診療領域で注目されています。

PRP-FDと同様に、幹細胞培養上清液には幹細胞を含まないため、再生医療等安全性確保法に基づく届出・審査の対象とはならず、医師の裁量のもとで自由診療として提供されています。

一般的には以下のような流れで提供されます。

一般的な提供の流れ

  1. 製造
     専門の製造業者が、脂肪・臍帯・骨髄などの幹細胞を用いて上清液を製造します。
  2. 検査・精製
     検査・精製処理を経て、凍結保存(冷凍バイアル)またはフリーズドライ加工(粉末)された製剤として医療機関へ納品されます。
  3. 投与
     凍結品であれば解凍し、フリーズドライ加工品であれば生理食塩水などで溶解し、元の液体状態に戻してから点滴や注射により投与します。

この幹細胞培養上清液の特性は、在宅医療の枠組みにも適応しやすいと考えられており、実際に一部の医療機関では、医師が患者さんのご自宅や施設を訪問し、点滴や局所注射を行う「訪問美容医療」サービスとして提供が始まっています。

高齢者施設や自宅療養中の方にとっては、クリニックへの通院が不要で、抗老化ケアや育毛治療、疲労回復などを目的とした施術を受けられる手段の一つとなる可能性を秘めています。

ただし、上清液の品質にはばらつきがあり、

  • 原料となる幹細胞の種類(脂肪・臍帯など)
  • 培養条件や添加物の有無
  • 検査項目や製造過程

などにより、含有成分や安全性が大きく異なります。

在宅医療として提供する場合であっても、「使用する製剤の選定」「投与量と方法」「患者さんの体調・既往歴の把握」など、医療者側の十分な知識と慎重な判断が求められます。

PRP-FD・幹細胞培養上清液が、なぜ在宅医療と相性が良いのか?

ご紹介したPRP-FD(フリーズドライ化された自己血由来成分)や幹細胞培養上清液は、いずれも再生医療の知見を活かした自由診療でありながら、在宅医療との相性が良いため、注目されています。

その理由をあらためて整理すると、以下のような点が挙げられます。

届出や専用設備を要さず、自由診療として提供可能

一般的なPRP療法や幹細胞治療とは異なり、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の届出や細胞加工施設は必要ありません。そのため、在宅医療の枠組みでも導入できる可能性が高いです。

施術工程がシンプルで、訪問診療に適している

製剤はすでに加工済みで納品されるため、施術当日は注射や点滴などの簡便な処置のみで済みます。持ち運び可能な物品で対応できるため、医師や看護師に訪問診療に適しています。

高齢者施設や在宅療養者に適したメニュー

外出が難しい患者さんや、予防医療・アンチエイジングを希望する高齢者層にとって、訪問による再生医療関連メニューはニーズと合致します。

製剤の保存性・携帯性に優れる

フリーズドライ製剤や上清液は、冷所または常温で保管でき、長期間の保存や移動にも対応できるため、在宅診療での取り扱いにも適しています。

自由診療としての差別化要素になり得る

保険診療を主体とする在宅医療の現場においても、「高付加価値な自由診療メニュー」として導入できる点は、今後の差別化戦略としても注目されています。

このように、医療機関側・患者さん側の双方にとって「現実的で導入しやすい」点が、在宅医療と親和性の高い理由と言えるでしょう。

ただし、施術に使用する製剤の品質、適切な管理体制の構築、そして医師による十分な説明と同意の取得など、自由診療とはいえ、十分な知識と配慮は不可欠です。

次の章では、実際に導入する際に注意したいポイントについてご紹介します。

PRP-FDや幹細胞培養上清液を在宅医療への導入を検討する際に注意したいポイント

在宅医療においてPRP-FDや幹細胞培養上清液といった再生医療関連メニューを導入する場合、自由診療であるからこそ、より一層の慎重な対応と適切な体制構築が求められます。

ここでは、特に留意すべきポイントを解説します。

医療行為としての安全性・リスク管理

再生医療関連メニューはあくまで「医療行為」であり、自由診療であっても安全性に対する責任は免れません。

実際に、幹細胞培養上清液を点滴投与した患者が急性腎障害を発症した事例(※美容医療クリニックでの報告)も確認されています

出典:美容医療協会|2023年2月15日付

在宅医療では、病院とは異なり緊急対応が制限されるため、以下のような備えがより重要です。

  • 適応の慎重な判断
    患者さんの基礎疾患の有無や現在の健康状態を詳細に把握し、治療の適応を慎重に見極めることが不可欠です。
  • 施術前の詳細な説明と同意取得
    期待できる効果だけでなく、起こりうるリスクや副作用について、患者さんやご家族に十分に説明し、納得のうえで同意を得ることが重要です。
  • 投与中の体調変化の監視体制
    投与中は、医師または看護師が患者さんの体調変化を注意深く観察し、異変があれば即座に対応できる体制を整える必要があります。
  • 万一の際の連携医療機関の明確化
    緊急時に速やかに患者さんを受け入れ、適切な処置を行える連携医療機関をあらかじめ明確にしておくことが必須です。

導入時の業者選定とサポート体制の確認

PRP-FDや上清液は、さまざまな業者・メーカーが取り扱っていますが、価格・濃度・製法・品質管理体制は大きく異なります。導入にあたっては、単に費用面だけで判断せず、製品の安全性に関する情報開示や、医療従事者向けのサポートが充実しているかどうかも重要な判断基準となります。

  • 製品の安全性に関する情報開示
    製造過程における衛生管理、ウイルス検査、エンドトキシン検査などの安全性データが明確に開示されているかを確認しましょう。
  • 品質の均一性と安定性
    バッチごとの品質のばらつきが少なく、有効成分が安定して含まれている製品を選ぶことが、治療効果の安定にもつながります。
  • 医療従事者向けのサポート体制
    製剤の保管方法、溶解方法、投与方法に関する詳細な情報提供や、導入後の技術的な問い合わせに対応してくれるサポートが充実しているかを確認しましょう。

まとめ

高齢化が進む日本において、患者さんが通院せずに自宅で医療を受けられる「在宅医療」は、今後ますますその重要性を増していくでしょう。

ご紹介したPRP-FD(フリーズドライ化された自己血由来成分)や幹細胞培養上清液といった「再生医療関連メニュー」は、在宅医療の枠組みの中でも比較的導入しやすい自由診療の選択肢として、今後確実に拡大していく可能性を秘めています。

現状では導入事例はまだ限定的ですが、在宅医療における差別化や新たな価値提供の一手として、こうしたメニューの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

当センターでは、PRP-FDや幹細胞培養上清液の導入に際して、ご相談を承っております。在宅医療での再生医療関連メニュー導入をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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泉山秀和
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