再生医療の導入に適した診療科は?主な治療種類と選び方を解説

再生医療の導入を検討する際、自院の診療科ではどのような治療を提供できるのか、判断に迷うことがあります。
再生医療は、整形外科、美容科、皮膚科、薄毛・AGA、婦人科、脳・神経科、内科など、さまざまな診療科で導入の対象となっています。ただし、同じ診療科でも、対象疾患や使用する治療技術によって確認すべき条件は異なります。
この記事では、再生医療を導入できる主な診療科と、診療科別に導入が検討されているPRP療法、幹細胞治療、免疫細胞療法などを分かりやすく解説します。
- 再生医療を導入できる主な診療科
- 届出の多い治療領域と近年の傾向
- 診療科別に検討されている治療の種類
- 自院に適した治療を選ぶ判断ポイント
再生医療を導入できる主な診療科
再生医療は、特定の一つの診療科だけで提供される治療ではありません。対象疾患や治療目的、使用する細胞や血液由来成分に応じて、幅広い診療領域で導入が検討されています。
再生医療は何科で導入できるか?

整形外科やリハビリテーション科では、関節、筋肉、腱、靱帯、脊椎などの運動器疾患を対象として、PRP療法や幹細胞治療の導入が検討されています。
美容科や皮膚科では、しわやたるみ、皮膚萎縮、難治性皮膚潰瘍などに対するPRP療法や幹細胞治療があります。薄毛・AGAの領域では、頭皮へのPRP療法や幹細胞を用いた治療などが選択肢となります。
このほか、婦人科・不妊、脳・神経科、ペインクリニック、内科・内臓疾患、がん・免疫療法などでも、疾患や治療目的に応じた再生医療等提供計画が届け出られています。
ただし、診療科の名称だけで導入できる治療が決まるわけではありません。同じ診療科でも、対象疾患、使用する細胞、加工方法、投与部位などによって、必要な手続きや診療体制が変わります。
自院で検討する際は、現在の患者層、医師の専門性、既存診療との相性を踏まえ、具体的な治療内容を絞り込むことが大切です。
届出の多い治療領域と近年の傾向

厚生労働省が2026年7月1日に公表した資料によると、本記事で扱う領域のうち、整形外科疾患、美容・抗加齢等、がん・免疫疾患などを対象とした治療計画が多く届け出られています。
2026年6月10日時点の集計では、整形外科疾患が1,637件で24%、美容・抗加齢等が1,454件で22%、がん・免疫疾患が899件で14%です。
このほか、慢性疼痛が419件で6%、その他の内科・外科疾患が221件で3%、神経・精神疾患が140件で2%となっています。
使用する細胞加工物等の種類では、PRPを用いた治療計画が3,858件で57%と最も多く、間葉系幹細胞(MSC)が1,545件で23%、免疫細胞が1,086件で16%と続きます。
近年は、整形外科疾患、美容・抗加齢等、がん・免疫疾患、慢性疼痛を対象とした新規届出が増加傾向にあります。治療技術別ではPRP、MSC、免疫細胞のいずれも増えており、特にMSCは2023年度頃から増加が目立っています。
ただし、これらは再生医療等提供計画の名称をもとに分類した計画数であり、実際に治療を受けた患者数や実施件数ではありません。
また、e-再生医療への掲載や届出数の多さは、治療の薬事承認や有効性・安全性の保証を意味するものではありません。
参照:厚生労働省「再生医療等安全性確保法の施行状況等について」
再生医療の第一種・第二種・第三種とは
再生医療等安全性確保法では、再生医療等技術を人の生命や健康に与える影響の程度に応じて、第一種・第二種・第三種に分類しています。
第一種は、iPS細胞や遺伝子改変技術などを用いる高リスクの区分です。第二種は第一種ほどではないものの相応のリスクが想定される技術、第三種は第一種・第二種に該当しない比較的リスクの低い技術に当たります。
本記事で扱うPRP療法、幹細胞治療、免疫細胞療法は、具体的な治療内容に応じて、主に第二種または第三種に分類されます。
同じ治療名称でも、使用する細胞、加工方法、治療目的、投与部位などによって区分が変わる場合があります。治療名だけで判断せず、自院で提供する内容を明確にしたうえで確認してください。
詳しい法区分や手続きについては、再生医療等提供計画の作成・審査・届出の流れで解説しています。
e-再生医療に掲載されている提供計画の対象疾患を、厚労省受理事例一覧2026として整理し、無料で提供しています。診療科別の治療を検討する際の参考資料としてご活用ください。
診療科別に見る再生医療の治療
再生医療として扱われる治療には、PRP療法、幹細胞治療、線維芽細胞療法、免疫細胞療法などがあります。
使用する原料や加工工程、治療までの期間、医療機関に求められる対応は、治療技術によって異なります。

PRP療法では、患者自身の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む成分を調製して患部へ投与します。
幹細胞治療では、脂肪や骨髄などから採取した細胞を加工して投与します。免疫細胞療法は、患者から採取した免疫細胞を加工・培養したうえで体内へ戻す方法です。
ここからは、PRP幹細胞導入支援センターの相談可能な事例と、厚生労働省が公表した再生医療等提供計画の傾向を踏まえ、主な診療科と治療を紹介します。
整形外科・リハビリテーション
整形外科やリハビリテーション科は、PRP療法や幹細胞治療の届出が多い診療領域です。
主な相談例には、筋肉、腱、靱帯へのPRP療法、関節へのPRP療法・幹細胞治療、腰椎症や頸椎症に対する治療などがあります。
関節領域では、変形性膝関節症や軟骨損傷などが治療候補となります。スポーツ整形では、腱障害、靱帯損傷、スポーツによる筋損傷などへのPRP療法が選択肢となります。

厚生労働省の集計では、第二種の治療計画において、整形外科疾患を対象としたPRP療法や、MSCを用いた治療が主要な例として挙げられています。近年も、これらの新規届出は増加傾向です。
画像診断、局所への注射、保存療法、リハビリテーション、経過観察など、既存診療と組み合わせやすい点も整形外科の特徴です。
変形性膝関節症の患者が多い医療機関では膝関節を対象とした治療、スポーツ障害の患者が多い場合は腱や靱帯への治療から検討できます。
整形外科における詳しい導入方法は、整形外科で再生医療を導入する方法と手続きの全体像で解説しています。
美容科

美容科では、しわやたるみ、皮膚萎縮などの美容上の悩みに対するPRP療法や幹細胞治療が相談対象となっています。
PRP療法は、患者自身の血液から調製したPRPを皮膚へ投与する方法です。整形外科で関節や腱に投与する治療とは、対象組織や目的が異なります。
厚生労働省の集計では、美容・抗加齢等を対象とした治療計画は、本記事で扱う領域のなかでも多くなっています。第二種ではMSC治療が主要な組み合わせの一つで、2023年度以降は新規届出も増加しています。
導入時には、現在提供している美容施術との違い、患者が抱える悩み、施術前後の評価方法を整理し、既存メニューの中での位置づけを明確にします。
薄毛・AGA

薄毛・AGAの領域では、脱毛症や薄毛に対するPRP療法、育毛を目的としたPRP療法、幹細胞を用いる治療などがあります。
頭皮へのPRP療法は、患者自身の血液から調製したPRPを頭皮へ投与する方法です。肌を対象とする美容科のPRP療法とは、投与部位と治療目的が異なります。
すでに薄毛・AGA診療を行っている医療機関では、内服薬や外用薬などの既存治療と比較しながら、再生医療の位置づけを決めます。
対象とする脱毛症、患者の状態、これまでに受けた治療を確認し、適応を判断する基準をあらかじめ定めておくことが大切です。
治療後は、撮影条件や評価時期をそろえて記録し、経過を継続的に確認します。
皮膚科

皮膚科の導入相談では、皮膚や皮下組織へのPRP療法、難治性皮膚潰瘍に対するPRP療法、アトピー性皮膚炎に対する幹細胞治療などが対象となっています。
美容上の悩みだけでなく、治りにくい皮膚疾患や創傷などを対象とする点が、美容科との主な違いです。
対象疾患、皮膚の状態、標準治療の実施状況を確認し、再生医療を提案する患者の基準を設定します。
治療後は、患部の状態や創傷の治癒経過を同じ基準で評価し、変化を記録できる体制が求められます。
婦人科・不妊

婦人科・不妊治療では、更年期障害に対する幹細胞治療、子宮内膜着床不全や卵巣機能に関するPRP療法、女性器の皮膚・粘膜の加齢性変化に対するPRP療法などが相談対象となっています。
治療の位置づけは、対象となる症状や目的によって異なります。患者の年齢、既往歴、現在受けている治療を確認し、慎重に適応を判断します。
標準治療や既存の不妊治療との違いを整理し、期待できる範囲、効果の個人差、治療後の評価方法を具体的に説明できるようにしておきます。
脳・神経科/ペイン

脳・神経科では、脳梗塞などの脳卒中後遺症に対する幹細胞治療があります。ペインクリニックの主な相談例には、慢性疼痛に対する幹細胞治療などがあります。
厚生労働省の集計には、神経・精神疾患と慢性疼痛を対象とした治療計画が掲載されています。慢性疼痛に関する新規届出は2023年度頃から増加し、MSCを用いた治療が主要な組み合わせの一つとなっています。
慢性疼痛には原因や症状の異なる疾患が含まれるため、診断、患者選定、既存治療との関係を整理したうえで治療内容を決めます。
脳・神経疾患では、症状や疾患の状態を慎重に確認し、治療後の機能評価や長期的な経過観察まで含めて診療を設計します。
専門性の高い領域ですが、医療機関の規模だけで導入の可否が決まるわけではありません。医師の専門性、投与方法、治療後の管理、外部施設との連携を含めて個別に判断します。
内科・内臓疾患

内科・内臓疾患では、肝障害、糖尿病、腎疾患、動脈硬化などを対象とした幹細胞治療が相談対象となっています。
必要な診察、検査、投与後の管理は、疾患や患者の全身状態によって変わります。基礎疾患や併用薬も含めて確認し、治療の対象となる患者を選定します。
細胞加工などを自院で実施できない場合は、外部の細胞培養加工施設と連携して治療体制を構築する方法があります。
医師の専門領域と既存患者との親和性を確認し、継続して経過を観察できる疾患から導入を考えると、無理のない運用につながります。
がん・免疫療法

がん・免疫療法の領域では、NK細胞療法、樹状細胞療法、NKT細胞療法など、患者から採取した免疫細胞を用いる治療計画があります。
厚生労働省の集計では、がん・免疫疾患を対象とした治療計画は899件で、対象疾患群別の治療計画全体の14%を占めています。免疫細胞を用いた計画は1,086件で、PRP、MSCに次いで多い治療技術です。
第三種では、がん・免疫疾患を対象とした免疫細胞療法が主要な組み合わせの一つとなっています。2023年度以降は、新規届出も増加傾向です。
免疫細胞療法では、患者から細胞を採取し、外部の細胞培養加工施設などで加工・品質管理を行ったうえで、医療機関へ戻して投与する方法があります。
対象とするがんの種類、患者の全身状態、標準治療の実施状況、治療を行う時期を整理し、適応を判断します。
免疫細胞療法は、標準的ながん治療に代わるものとして一律に案内する治療ではありません。手術、薬物療法、放射線治療などとの関係を明確にし、期待できる範囲や限界、費用、有害事象を説明できる体制が求められます。
自院に適した治療を選ぶポイント
自院に適した再生医療を選ぶには、診療科の名称だけでなく、既存患者の疾患、医師の専門性、現在の診療との組み合わせ、治療後のフォローまで確認します。

対象疾患と患者層を確認する
最初に、自院へどのような疾患や悩みを持つ患者が来院しているかを確認します。
他院で多く導入されている治療でも、自院の患者層と合わなければ、継続的な診療メニューとして定着しにくくなります。
たとえば、変形性膝関節症の患者が多い整形外科と、スポーツ障害を中心に診療する整形外科では、優先する治療が異なります。
美容科では患者が抱える肌の悩み、薄毛・AGAでは脱毛症の種類や既存治療の実施状況によって、適した治療内容が変わります。
- 対象疾患に該当する患者がどの程度来院しているか
- 現在の治療で十分な結果が得られていない患者がいるか
- 自由診療の選択肢を求める患者がいるか
- 治療後も継続して通院できる患者層か
- 自院の診療方針と再生医療の位置づけが合っているか
新規患者の獲得だけを目的にせず、現在来院している患者との相性から治療を選ぶことがポイントです。
医師の専門性と既存診療を生かす
再生医療を導入する際は、治療を実施できるかだけでなく、医師の専門性を生かして患者を適切に診断・選定できるかを確認します。
整形外科では、画像検査、保存療法、リハビリテーションなどと組み合わせられます。薄毛・AGAでは、内服薬や外用薬と比較しながら治療選択肢を提示できます。
再生医療だけで診療を完結させるのではなく、標準治療や既存の自由診療のどの段階に位置づけるかを明確にしてください。
同じ治療名称でも、対象疾患、使用する細胞、加工方法、投与部位が異なれば、必要な手続きも変わります。他院の治療をそのまま採用せず、自院で提供する内容を具体化することが必要です。
治療後のフォローを確認する
再生医療を導入する際は、治療を実施した後も、患者の状態を継続して確認できるかを考える必要があります。
導入前に、治療後のどのような変化を確認するのか、いつ診察するのか、どのような方法で記録するのかを決めておきます。
たとえば、整形外科では痛みや関節の動き、美容科や薄毛・AGAでは施術前後の写真、皮膚科では患部の状態や治癒経過などを確認します。
脳・神経科、内科、がん・免疫療法などでは、患者の全身状態や治療後の変化に加え、有害事象の有無を継続して確認できる体制も必要です。
治療後の診察や評価を自院で続けられるかを確認し、無理なく経過を追える治療から導入を検討します。導入時には、厚生労働省、PMDA、e-再生医療などの最新情報を確認し、必要に応じて再生医療に詳しい専門家へご相談ください。
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