再生医療市場レポート|PRP・幹細胞治療は今後どうなる?

国内では、PRPや幹細胞を用いた再生医療の提供が広がっています。厚生労働省の最新資料によると、令和7年度に提出された報告は5,440件で、前年度の4,478件から約21.5%増加しました。
治療として再生医療を受けた人は、報告上、年間約10万人にのぼります。継続中の治療目的の提供計画では、PRPが57%、間葉系幹細胞(MSC)が23%を占めており、現在の自由診療における再生医療は、PRPと幹細胞治療が中心となって広がっていることが分かります。
こうした数字を見ると、再生医療は一部の医療機関だけが扱う治療ではなくなりつつあります。今後、自由診療メニューの強化を考えるクリニックにとって、PRPや幹細胞治療の導入は、早い段階から検討しておきたい選択肢の一つといえるでしょう。
この記事では、厚生労働省が公表した最新データをもとに、国内で再生医療がどの程度利用され、どの治療が普及を牽引しているのかを整理します。あわせて、今後の導入判断やクリニック経営に活かすためのポイントを解説します。
- 年間約10万人が治療を受ける国内再生医療の利用状況
- PRPと幹細胞治療が普及を牽引している背景
- アメリカ・韓国・中国・欧州における再生医療の最新動向
- クリニック経営において再生医療をどう位置づけるべきか
国内の再生医療の提供状況を数字で見る
厚生労働省の最新データから、再生医療がどの程度利用され、どの治療が普及を牽引しているのかを見ていきます。

再生医療の提供状況を把握する仕組み
再生医療を提供する医療機関には、法律に基づき、治療の提供状況を定期的に報告する義務があります。厚生労働省が公表する集計結果を見ることで、国内における再生医療の利用状況や提供計画の広がりを把握できます。
ただし、報告件数や提供計画数は、医療機関数や市場の売上高を直接示すものではありません。また、提供計画の提出は、厚生労働省が個別の治療の安全性や有効性を保証していることを意味するものではない点には注意が必要です。
令和7年度の再生医療の提供状況とリスク分類別の内訳
令和7年度に厚生労働省へ提出された報告は5,440件で、前年度から約21.5%増加しました。また、治療として再生医療を受けた人は約10万人、治療の延べ件数は約15.5万件にのぼります。

令和7年度に報告された5,440件のうち、治療に関するものは5,353件で、全体の98%以上を占めています。研究に関するものは87件でした。
この数字から、国内の再生医療等提供計画では、研究よりも治療を目的とする計画が中心であることが分かります。ただし、この割合は自由診療市場の売上高や患者需要、治療の普及率を直接示したものではありません。
また、再生医療等提供計画は、人への負担やリスクの程度に応じて第一種・第二種・第三種の3つに分類されます。令和7年度は、第三種が67.4%にあたる3,667件、第二種が32.4%にあたる1,760件で、この2つが報告件数の大部分を占めました。
PRP療法は主に第二種または第三種として扱われます。幹細胞を用いる治療についても、使用する細胞や加工方法などにより分類が異なります。そのため、「PRPや幹細胞治療はすべて同じ分類」と考えず、導入する治療内容ごとに確認する必要があります。
地域別に見ると、治療として再生医療を受けた人は、東京都が39,087人、福岡県が12,153人、大阪府が9,542人、愛知県が3,959人となっており、都市部への集中が見られます。ただし、これは報告上の治療利用者数であり、提供医療機関数や地域の潜在需要を直接示すものではありません。

診療領域別に見る対象疾患の分布
令和8年6月10日時点で中止届が提出されていない治療目的の提供計画6,734件を対象疾患群等で分類すると、整形外科疾患が25%にあたる1,680件、歯科疾患が24%にあたる1,637件、美容・抗加齢等が22%にあたる1,454件、がん・免疫疾患が14%にあたる899件という順になっています。
整形外科疾患、歯科疾患、美容・抗加齢等の3領域を合わせると、継続中の治療計画の約7割を占めています。再生医療が特定の診療科だけに限られず、複数の診療領域で提供されている状況が分かります。
年度別の新規届出を見ると、特に整形外科、美容・抗加齢、慢性疼痛など、QOL向上に関わる領域で近年増加が目立っています。

リスク分類別に見ると、第二種の治療計画では、整形外科疾患が42%、美容・抗加齢等が22%、慢性疼痛が17%となっています。第三種では歯科疾患が38%と最も多くなっています。

このことから、自院がどの診療領域で再生医療を検討するかによって、参考にすべき提供計画、必要な審査、院内体制、競合状況が異なることが分かります。
なお、厚生労働省資料における疾患群等の分類は、提供計画の名称などをもとに行われています。複数の分類に該当する計画があるため、各項目を単純に合計しても全体数と一致しない場合があります。
使用される細胞加工物の種類と割合
治療目的の提供計画6,733件を、使用する特定細胞加工物等の種類で見ると、多血小板血漿であるPRPが57%にあたる3,858件で最も多く、間葉系幹細胞であるMSCが23%にあたる1,545件、免疫細胞が16%にあたる1,086件と続きます。
PRPを使用する提供計画は全体の半数以上を占めており、国内の再生医療等提供計画の中で多く採用されている方法であることが分かります。
表に掲載した主要区分以外にも、割合が0.1%未満の少数区分があります。また、提供計画によっては複数の細胞加工物等に分類されるため、各項目の単純合計と全体数が一致しない場合があります。
年度別の新規届出数を見ると、PRPを用いる提供計画は継続して多く、MSCを用いる計画は2023年度頃から増加が目立っています。一方、免疫細胞を用いる計画には年度による変動も見られます。

こうした状況を踏まえると、現在多く採用されているPRPだけでなく、近年新規届出が増加しているMSCについても、自院の診療方針や患者層、院内体制に応じて、導入初期から比較・検討することが重要です。ただし、今回の統計は、実際に各医療機関がPRPからMSCへメニューを広げた経過を追跡したものではありません。
アメリカ・韓国に見る海外の再生医療動向
今回の厚生労働省資料は、日本国内の再生医療等提供計画や治療の提供状況を集計したものであり、海外の市場規模や承認状況を比較した資料ではありません。海外の動向については、国内データとは分けて参考情報として見る必要があります。
アメリカでは、がん領域を中心にCAR-T細胞療法などの細胞治療が実用化され、FDAには再生医療先端治療を対象としたRMAT指定制度があります。再生医療や細胞治療の研究開発を迅速化する仕組みが設けられている一方で、承認された製品と、承認を受けていない自由診療的な治療は明確に区別されています。
韓国でも、再生医療や先端バイオ医薬品に関する法制度の整備が進められています。また、美容医療や医療ツーリズムとの関係で、幹細胞や細胞由来成分をうたう施術が注目されることがあります。
ただし、アメリカや韓国と日本では、承認制度、保険制度、自由診療に関する規制、広告規制などが異なります。海外で注目されている治療やサービスを、そのまま日本のクリニック経営に当てはめることはできません。国内で導入する場合は、日本の再生医療等安全性確保法や薬機法などに基づいて判断する必要があります。
中国・欧州の動向と日本への示唆
中国では、バイオテクノロジーや細胞治療が国家的な研究開発分野の一つとして位置づけられ、CAR-T細胞療法をはじめとする研究開発や製品化が進められています。国の政策や投資が研究開発を後押ししている点が特徴です。
一方、欧州では、遺伝子治療、体細胞治療、組織工学製品などが先進医療医薬品であるATMPとして規制されています。欧州医薬品庁では、安全性、有効性、品質を確認するための審査やガイドラインの整備が継続されています。
中国や欧州の動向から分かるのは、再生医療の研究開発を促進するだけでなく、品質管理、安全性評価、長期的な有効性の確認を並行して進める必要があるという点です。
日本の医療機関が海外動向を参考にする際も、海外での投資額や注目度だけを見るのではなく、日本国内で適用される制度、提供可能な治療内容、患者への説明責任まで含めて検討する必要があります。
再生医療市場を踏まえたクリニック経営の考え方
ここまで見てきた提供計画や治療の利用状況、行政動向は、単なる知識ではなく、クリニックの導入判断に活用してこそ意味を持ちます。ここからは、再生医療に関する公的データをクリニック経営にどう活かすかを整理します。
再生医療等製品と2025年以降の法改正

薬機法に基づき製造販売承認を受けた「再生医療等製品」は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA「新再生医療等製品の承認品目一覧」)で年度ごとに公表されています。
ここで注意したいのは、薬機法に基づく「再生医療等製品」と、医療機関が再生医療等提供計画を提出して行う再生医療は、根拠となる制度が異なるという点です。
承認済みの再生医療等製品に関する情報をホームページなどで紹介する場合は、自院が提供する自由診療メニューと同じ安全性、有効性または承認状況であるかのように受け取られない表現にする必要があります。
制度面では、再生医療等安全性確保法の改正法が2024年6月に公布され、2025年5月31日に施行されました。この改正により、細胞を用いないin vivo遺伝子治療も法の対象に加わっています。
また、2025年10月6日には「特定細胞加工物の微生物学的安全性に関する指針」の第1版が策定されました。再生医療の提供では、治療内容だけでなく、細胞の採取、加工、保管、輸送、品質管理なども重要になります。
手続き面では、再生医療等提供計画の提出、変更、定期報告などをオンライン手続サイト「e-再生医療」を通じて行う仕組みが整備されています。制度や様式は更新される可能性があるため、申請や定期報告を行う際は、厚生労働省「再生医療等に関する更新情報」で最新の通知を確認することが重要です。
エクソソーム治療の規制強化に向けた動き
エクソソームや細胞培養上清液を用いる治療は、細胞そのものを用いる再生医療とは異なるものです。そのため、現在提供されている治療の中には、再生医療等安全性確保法に基づく再生医療等提供計画の対象外として扱われているものがあります。
一方で、エクソソームや培養上清液などの細胞分泌物については、品質、安全性、製造管理、患者への説明などをどのように確保するかが課題となっています。
改正法の附則では、施行後おおむね2年を目途として、細胞の分泌物を用いる医療技術について検討し、必要がある場合には法制上の措置を講じることが示されています。そのため、今後、エクソソームや培養上清液を用いる治療に関する規制や管理方法が見直される可能性があります。
エクソソーム関連メニューを提供している、または導入を検討している医療機関は、現時点で法の対象外と判断される治療であっても、品質管理、仕入れ先の確認、患者への説明、同意取得、広告表現を適切に管理する必要があります。厚生労働省の検討状況や通知を継続的に確認することも重要です。
保険診療だけに依存する経営リスク
診療報酬改定や物価、人件費の上昇などにより、保険診療を中心とする医療機関でも、収益構造や診療体制の見直しが必要になる場面があります。そのため、自院の診療方針に合う場合には、自由診療を組み合わせることも経営上の選択肢となります。
特に整形外科領域では、保険診療による保存療法を続けている患者から、別の治療選択肢について相談を受けることがあります。PRP治療などの自由診療を設けることで、保険診療とは異なる選択肢を提示できる可能性があります。
ただし、再生医療を導入すれば、自動的に患者数や収益が増えるわけではありません。治療の適応、期待できる効果と限界、費用、リスクなどを正確に説明し、患者が十分に理解したうえで選択できる体制が必要です。
開業時からPRP治療や幹細胞治療を自由診療メニューとして検討する場合は、ホームページ、院内掲示、スタッフ教育、診療導線、カウンセリング方法などをあらかじめ設計できる利点があります。
一方、自由診療への偏重が正解というわけではありません。保険診療と自由診療の役割を分け、自院の専門性、地域の患者層、医師やスタッフの体制に合わせて設計することが前提になります。
PRP・MSCは整形外科を中心に広がりつつある

厚生労働省資料では、PRPを用いる治療計画が全体の57%、MSCを用いる治療計画が23%を占めています。対象疾患群では整形外科疾患に関する計画が最も多く、第二種の治療計画では、PRPとMSCのいずれも整形外科領域で多く採用されています。
ただし、提供計画数が多いことは、PRPやMSCがすべての整形外科クリニックで標準治療になっていることや、厚生労働省が個別の治療の有効性を認めていることを意味するものではありません。
PRP治療は、患者本人の血液から調製した多血小板血漿を用いる方法であり、他の細胞治療と比較すると院内への導入を検討しやすいケースがあります。一方、MSCを用いる治療は、整形外科疾患だけでなく、慢性疼痛などでも新規届出が増えています。
そのため、自由診療メニューを検討する際は、PRPだけを前提にするのではなく、自院の診療方針や患者層、院内体制に応じて、MSCも含めて比較・検討することが重要です。
ただし、PRPやMSCを導入しただけで患者に認知され、利用されるわけではありません。適応患者の抽出、患者への説明、スタッフ間の連携、治療後のフォローまで含めた運用設計が必要です。
導入後の成果を左右する運営設計
再生医療は、提供計画を提出して治療メニューを設けただけで、患者数が自動的に増えるものではありません。継続的に提供していくためには、患者への説明体制、適応患者の抽出方法、スタッフ教育、ホームページや院内掲示を含む案内導線、価格設定、カウンセリング体制まで含めて設計する必要があります。
- 医師の説明負担を軽減するための分業体制
- 適応となる患者を院内でどう抽出し案内するか
- ホームページ・LP・院内掲示など診療導線の設計
- 価格設定とカウンセリングの進め方

これらに加えて、治療の適応判断、同意説明文書、記録管理、疾病等報告、定期報告、変更手続きなど、法令上必要となる業務も継続して行わなければなりません。
つまり、これから求められるのは「再生医療を導入すること」だけではなく、「法令を守りながら、再生医療を診療と経営の中でどう運用するか」という視点です。患者に適切な情報を提供し、継続的かつ安全に治療を提供できる体制まで作り込めるかどうかが重要になります。
まとめ:再生医療市場から見るクリニックの次の一手
厚生労働省の資料を見ると、令和7年度に厚生労働省へ提出された報告は5,440件で、前年度の4,478件から増加しました。また、令和8年6月10日時点で継続中の治療目的の提供計画では、整形外科疾患、歯科疾患、美容・抗加齢等に関するものが多くなっています。
使用する細胞加工物等では、PRPが57%と最も多く、MSCが23%、免疫細胞が16%と続きました。年度別の新規届出数では、整形外科疾患、美容・抗加齢等、がん・免疫疾患、慢性疼痛に関する計画で増加が見られる一方、年度による変動もあります。
慢性疼痛については、以前は新規届出がほとんど見られなかったものの、近年はMSCを用いる計画を中心に増加が見られます。一方、歯科領域は継続中の計画数が多いものの、新規届出数は比較的安定しており、すでに一定の普及段階に入っている可能性があります。
ただし、今回のデータは、再生医療の売上高、患者需要、治療効果、医療機関の収益性を直接示すものではありません。また、提供計画が提出されていることは、厚生労働省が個別の治療の安全性や有効性を保証していることを意味しません。
この記事では、厚生労働省の最新の公表データを中心に、再生医療の提供状況、海外動向、行政の動き、クリニック経営における位置づけを整理しました。
数字から見ると、PRPやMSCを用いた再生医療等提供計画は、整形外科、美容、歯科など複数の診療領域で提出されています。クリニックにとって重要なのは、単に「再生医療を導入するかどうか」ではなく、「自院の患者層にどの治療が適しているか」「どのような説明・診療導線・運営体制で提供するか」を検討することです。
なお、再生医療の申請は、再生医療等提供計画が受理されれば終わりではありません。治療開始後も、定期報告、変更手続き、記録管理、疾病等が発生した場合の報告など、継続的な対応が求められます。
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