【2026年最新版】再生医療等製品の承認・保険適用一覧|iPS細胞・幹細胞・遺伝子治療の効果と治療開始時期

最終確認日:2026年10月11日
「iPS細胞を使った治療が承認された」「半月板の再生医療が実用化された」。こうしたニュースを見て、ご自身やご家族も治療を受けられるのか、保険は使えるのかと気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
再生医療等製品の実用化は進んでいます。ただし、承認されたことと、希望する患者さんがすぐに治療を受けられることは同じではありません。対象となる病気や病状、保険の適用条件、製品の供給、実施医療機関の体制によって状況が異なります。
本記事では、過去の承認製品も含めて全体像を整理し、アムシェプリ、リハート、セイビスカス注、アクーゴ、エドスチラドリンを個別に解説します。効果の根拠と限界、保険適用、費用、実際の治療開始状況を、公式に公表された情報に沿って確認していきましょう。
再生医療等製品とは?自由診療の再生医療との違い

再生医療等製品は、加工した細胞・組織や、遺伝子を利用して病気を治療する製品などを含む、薬機法上の製品区分です。細胞を使って組織や機能の修復を目指すものだけでなく、がんに対するCAR-T細胞製品や遺伝子治療製品も含まれます。
そのため、「再生医療等製品」という名称だけで、失われた臓器が元どおりになる治療だと理解するのは正確ではありません。何を改善するために承認された製品なのかを個別に見る必要があります。
「国の承認を受けた製品」と「提供計画を届け出た治療」は異なる
当事務所でも、再生医療等製品による治療と、自由診療として行われる再生医療を混同したご質問・お問い合わせが、これまでに2〜3件ありました。同じ「幹細胞」「再生医療」という言葉が使われるため、違いがわかりにくい場面があります。
↓表は横にスライドできます↓
| 比較項目 | 承認された再生医療等製品 | 自由診療のPRP療法・幹細胞治療など |
|---|---|---|
| 制度上の位置づけ | 薬機法に基づき、製品ごとに品質・有効性・安全性を審査 | 主に再生医療等安全性確保法に基づき、提供計画や実施体制等を整備 |
| 対象 | 承認された病気・病状・使用方法に限定 | 医療機関が届け出た提供計画や診察結果により異なる |
| 効果の評価 | 製品の審査資料・臨床試験で確認。条件・期限付き承認では追加検証が必要 | 治療ごとに臨床研究、使用する細胞、投与方法などを確認 |
| 費用 | 保険収載と適用条件の確認が必要 | 自由診療部分は原則として全額自己負担 |
提供計画の届出は、国がその治療の効果を製品として承認したという意味ではありません。また、薬事承認と保険適用は別の判断です。「承認製品だから必ず保険が使える」「自由診療だから規制がない」という理解も避けましょう。
出典:厚生労働省「再生医療等提供計画の提出等について」/中医協・再生医療等製品の医療保険上の取扱い
【2026年最新版】再生医療等製品の承認・保険適用一覧

まず主要5製品を比較し、その後に既存製品とその他の新製品をまとめます。表中の対象疾患は読みやすく要約しています。実際の適応には、年齢、治療歴、検査結果などの追加条件があります。
「通常承認」は条件・期限付き承認ではない製造販売承認を指します。ただし、通常承認でも全例調査などの承認条件が付くことがあります。「収載済み」は、誰でも・どこでも受けられるという意味ではありません。
詳しく知っておきたい主要5製品
↓表は横にスライドできます↓
| 製品名 | 主な対象 | 承認 | 保険適用 | 治療開始・提供状況 |
|---|---|---|---|---|
| アムシェプリ | 薬物療法で効果不十分なパーキンソン病の運動症状 | 2026年3月6日/条件・期限付き | 2026年5月20日収載 | 当初は製造販売後臨床試験の対象患者に限定する計画 |
| リハート | 標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全 | 2026年3月6日/条件・期限付き | 2026年9月1日収載 | 同年9月29日、大阪けいさつ病院で保険適用後初の移植 |
| セイビスカス注 | 半月板切除術が適応となる半月板損傷 | 2026年5月8日/通常承認 | 医療機器の例で扱う方針まで確認。収載日・価格の確定情報は今回未確認 | 一般診療での提供開始日・施設一覧は今回未確認 |
| アクーゴ脳内移植用注 | 外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺 | 2024年7月31日/条件・期限付き。2025年12月8日に一部変更承認 | 2026年5月20日収載 | 5月21日発売、10月2日北海道大学病院で市販後初の投与 |
| エドスチラドリン膀胱内注入液 | BCG治療後に残存・再発した特定の高リスク膀胱がん | 2026年5月8日/通常承認 | 2026年7月15日収載 | 医療機関による治療案内・採用公表あり。受入条件は施設ごとに確認 |
承認情報:日本再生医療学会の製品一覧。保険・提供状況の個別出典は、下記の各製品の解説に掲載しています。「未確認」は未承認・未発売を断定する表現ではなく、今回確認した公開資料では確定できなかった項目を示します。
その他の新製品と、過去に承認された製品
初回承認年と、その後の適応追加・一部変更を区別しています。ジェイス、ジャックの初回承認年は、現在の再生医療等製品区分が設けられる前の承認を含みます。
↓表は横にスライドできます↓
| 製品名 | 初回承認年・区分 | 主な対象・用途 | 保険・供給等の確認ポイント |
|---|---|---|---|
| テロメライシン注 | 2026年/通常 | 根治切除・化学放射線療法の適応とならない食道がん | 8月13日収載、8月21日発売 |
| アロステムシート | 2026年/通常 | 特定の表皮水疱症に伴う治りにくい皮膚の傷 | 7月の保険収載対象。実施・供給条件の確認が必要 |
| ゾルゲンスマ髄注 | 2026年/通常 | 2歳以上の脊髄性筋萎縮症などの使用条件 | 5月の保険収載対象。点滴静注製品と対象年齢・投与経路が異なる |
| バイジュベックゲル | 2025年/通常 | 栄養障害型表皮水疱症 | 保険収載・発売済み。遺伝子治療製品 |
| エレビジス点滴静注 | 2025年/条件・期限付き | 一定条件を満たすデュシェンヌ型筋ジストロフィー | 2026年2月20日収載・発売。年齢、歩行能力、抗体・遺伝子検査等の条件あり |
| ルクスターナ注 | 2023年/通常 | 両アレル性RPE65遺伝子変異による遺伝性網膜ジストロフィー | 保険収載済み。遺伝子検査等による対象確認が必要 |
| ビズノバ | 2023年/通常 | 水疱性角膜症 | 2024年9月に保険収載。角膜内皮細胞を移植 |
| ジャスミン | 2023年/通常 | 非外科的治療で効果不十分、またはその適応がない白斑 | 保険収載済み。自家培養表皮を使用 |
| カービクティ点滴静注 | 2022年/通常 | 再発・難治性の多発性骨髄腫 | 保険収載済み。2026年にも適応条件の一部変更あり |
| アベクマ点滴静注 | 2022年/通常 | 再発・難治性の多発性骨髄腫 | 保険収載済み。前治療歴などの条件あり |
| サクラシー | 2022年/通常 | 角膜上皮幹細胞疲弊症に伴う眼表面の癒着 | 2022年保険収載、2023年販売開始 |
| イエスカルタ点滴静注 | 2021年/通常 | 一定の再発・難治性リンパ腫 | 保険収載済み。CAR-T療法の実施施設で適応判断 |
| ブレヤンジ静注 | 2021年/通常 | 一定の再発・難治性リンパ腫 | 保険収載済み。2026年にも対象疾患追加あり |
| デリタクト注 | 2021年/条件・期限付き | 悪性神経膠腫 | 保険収載済み。がん治療用の改変ウイルス製品 |
| オキュラル | 2021年/通常 | 角膜上皮幹細胞疲弊症 | 2021年12月保険収載。口腔粘膜由来細胞シート |
| ネピック | 2020年/通常 | 一定の角膜上皮幹細胞疲弊症 | 2020年6月保険収載。除外される病態あり |
| ゾルゲンスマ点滴静注 | 2020年/通常 | 2歳未満の脊髄性筋萎縮症などの使用条件 | 保険収載済み。抗体検査等が必要 |
| キムリア点滴静注 | 2019年/通常 | 一定の再発・難治性白血病、リンパ腫 | 保険収載済み。CAR-T療法の実施施設で適応判断 |
| ステミラック注 | 2018年/条件・期限付き | 一定の外傷性脊髄損傷に伴う神経症状・機能障害 | 保険収載済み。2026年10月15日に本承認に関する審議予定 |
| テムセルHS注 | 2015年/通常 | 造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病 | 保険収載済み。移植医療に関連する特定の病態が対象 |
| ジャック | 2012年/通常 | 一定の膝関節の軟骨欠損、変形性膝関節症 | 従来適応に加え、変形性膝関節症は2026年1月1日から保険適用 |
| ジェイス | 2007年/通常 | 一定の重症熱傷、先天性巨大色素性母斑、表皮水疱症 | 保険収載済み。疾患ごとの使用条件あり |
一覧の基礎資料:PMDA・再生医療等製品の承認情報/PMDA・既承認製品の整理資料/厚生労働省・薬価基準収載品目リスト
主な個別確認先:J-TECの承認・保険収載履歴/CynosBio・サクラシーの承認・発売履歴/中医協2026年7月8日議事録/中外製薬・エレビジス発売/ニプロ・ステミラック審議予定
販売終了・終了予定も確認したい承認歴のある製品
↓表は横にスライドできます↓
| 製品名 | 承認歴・対象 | 現在の一覧での扱い |
|---|---|---|
| アロフィセル注 | 2021年通常承認/クローン病に伴う一定の複雑痔瘻 | 国内販売中止を公表。メーカー案内は最終受注2026年11月、最終供給同年12月を予定。10月時点で「既に供給終了」とは記載しない |
| ハートシート | 2015年条件・期限付き承認/一定の重症心不全 | 本承認に至らず、2024年に承認整理。現在受けられる製品として案内しない |
| コラテジェン筋注用 | 2019年条件・期限付き承認/重症の慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍 | 2024年に本承認申請を取り下げ。現在の国内治療選択肢として案内しない |
出典:武田薬品・アロフィセル販売中止案内/武田薬品の販売中止通知(薬剤師会掲載)/厚生労働省・ハートシート等の取扱い/薬事審議会2024年7月24日議事録
アムシェプリ|パーキンソン病に対するiPS細胞由来の治療

アムシェプリは、薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者さんの運動症状の改善を目的とした製品です。住友ファーマが製造販売承認を取得しました。
対象となる患者さんと治療方法
他の人に由来するiPS細胞から、ドパミンをつくる神経細胞になる前段階の細胞を作製し、脳内に移植します。ドパミンは、体の動きを調節する神経の働きに関係する物質です。点滴で投与する治療ではなく、脳神経外科の手術を伴います。
「パーキンソン病と診断されていれば全員が対象」というわけではありません。病状や既存治療への反応、製造販売後臨床試験の参加条件などによって対象が絞られます。
臨床試験で確認された効果と限界
厚生労働省の説明では、有効性の解析対象6例のうち4例で主要評価項目の改善が認められています。ただし、比較対象となる患者群を置かない少数例の試験であり、全ての患者さんに同じ効果が得られると判断できる段階ではありません。
また、承認された目的は運動症状の改善です。病気全体の完治や、あらゆる症状の改善が保証されるものではなく、移植手術や免疫抑制に伴うリスク、長期的な安全性の評価も確認する必要があります。
承認・保険適用・費用
- 承認:2026年3月6日、条件・期限付き承認。
- 保険収載:2026年5月20日。
- 収載時薬価:18瓶1組55,306,737円。
この薬価は製品の価格であり、患者さんがその全額を支払うという意味ではありません。手術・入院等を含む総医療費、保険給付、高額療養費制度による負担額は別に確認します。
いつ、どこで受けられる?
京都大学医学部附属病院は、承認の根拠となった医師主導治験を実施した施設です。ただし、治験を実施したことと、一般診療で希望者を広く受け入れていることは別です。同院は、まず限定的に開始して長期評価を行う方針を説明しています。
住友ファーマの2026年5月公表資料では、2026〜2029年は製造販売後臨床試験の参加患者さんに移植し、その後に施設・対象患者さんを広げる計画が示されています。広く受けられる時期が確定したわけではなく、試験の進み方や製造体制等に左右されます。同院は直接の電話問い合わせを控えるよう案内しているため、企業・病院の公表する受付方法を確認してください。
出典:住友ファーマ・承認取得/厚生労働省・有効性評価の説明/厚生労働省・薬価算定資料/住友ファーマ・製造販売後臨床試験の計画/京都大学病院の患者さん向け案内
リハート|虚血性心筋症による重症心不全への心筋細胞シート

リハートは、標準的な薬物治療や手術などで十分な効果が得られない、虚血性心筋症による重症心不全が対象です。クオリプスが開発した、iPS細胞由来の心筋細胞シートです。
治療の仕組みと対象
虚血性心筋症は、心臓を養う血流の障害などによって心筋が傷み、心臓のポンプ機能が低下する病態です。リハートは細胞シートを心臓の表面に移植し、分泌される物質などを通じて心筋の状態や症状の改善を目指します。心不全全般や、健康な人の予防・若返りを目的とした製品ではありません。
効果はどこまで確認されている?
添付文書に記載された試験は、比較群を置かない8例の試験です。主要評価項目である移植26週後の心エコー検査による左室駆出率について、所定の改善基準を満たしたのは2例でした。一方、症状を表す心機能分類などでは改善も報告されています。
左室駆出率とは、心臓が血液を送り出す働きを見る指標です。症状の変化と心機能の検査値は同じ指標ではなく、良い結果だけを取り上げずに読む必要があります。条件・期限付き承認後も効果を検証する段階で、手術や免疫抑制に伴うリスクもあります。
保険適用と治療開始状況
- 承認:2026年3月6日、条件・期限付き承認。
- 保険収載:2026年9月1日。
- 保険償還価格:53,200,000円。
- 初回移植:2026年9月29日、大阪けいさつ病院で保険適用後初の移植を実施。
すでに実際の治療は始まっていますが、全国の一般病院で広く受けられる段階と同義ではありません。受入条件、移植の実施体制、供給状況は施設ごとに確認が必要です。初回移植の公表だけでは、すべての希望者の受付や待機期間まではわかりません。
出典:クオリプス・製品情報/PMDA掲載・リハート添付文書/厚生労働省・保険償還価格の審議/クオリプス・保険収載後初回移植の発表(英語)
セイビスカス注|半月板の温存を目指す自家滑膜由来幹細胞製品

セイビスカス注は、半月板切除術が適応となる半月板損傷に対して承認された、患者さん自身の滑膜由来の幹細胞を使う製品です。富士フイルム富山化学が製造販売します。
「膝に注射するだけ」の治療とは異なる
滑膜は関節の内側にある組織です。そこから採取した細胞を培養して製品を作製します。治療では、損傷した半月板を形成的に修復したうえで、関節鏡を用いて細胞を投与します。
そのため、外来で膝関節にPRPなどを注射する治療とは、採取する組織も手順も異なります。また、対象は承認条件を満たす半月板損傷であり、すべての膝痛や変形性膝関節症を対象にした製品ではありません。
臨床試験の結果
国内第Ⅲ相試験は19例を対象とした、比較群のない試験です。主要解析の対象となったフラップ断裂のある15例では、膝の症状・機能を評価するリスホルムスコアの52週後の変化量が53.5点と報告されました。メーカー発表では、平均スコアは38.1点から91.6点となっています。
ただし、半月板の修復処置と細胞投与を組み合わせた結果です。細胞単独の効果や、PRP・他の幹細胞治療に対する優越性を示す比較試験ではありません。自己由来の細胞でも、採取・手術に伴う痛み、出血、感染などのリスクを確認します。
承認・保険・治療を受けられる時期
製造販売承認日は2026年5月8日で、条件・期限付き承認ではありません。8月5日の中医協では、保険上は医療機器の例により扱う方針が了承されました。
ただし、この方針決定だけで保険適用日や価格が決まったとはいえません。今回確認した公式資料では、収載日・償還価格・一般診療での発売日を確定できなかったため、未確認として掲載しています。公表を確認でき次第、更新する項目です。
東京科学大学の関矢一郎教授が医師主導治験に関わったことは公表されていますが、これをもって同大学病院が一般診療の希望者を受付中とは案内できません。治療実施施設についても、一般診療での提供開始が確認できた段階で追記します。
出典:富士フイルム・承認取得と臨床試験結果/PMDA・審査報告書/厚生労働省・2026年8月5日中医協議事録
アクーゴ|外傷性脳損傷後の慢性期の運動麻痺に対する細胞治療

アクーゴは、事故などによる外傷性脳損傷の後、慢性期に残る運動麻痺の改善を目的とした製品です。サンバイオが製造販売します。
対象と治療方法
他の人の骨髄由来の間葉系幹細胞を加工・培養した細胞を、手術によって脳内の損傷部位の周辺に移植します。細胞が分泌する物質などを通じた神経機能の改善が期待されています。
「脳の病気に効く幹細胞」という広い理解は適切ではありません。承認された対象は外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺であり、脳梗塞、認知症、パーキンソン病などへの効果・保険適用を意味しません。
臨床試験で確認されたこと
国際共同第Ⅱ相試験では、細胞を移植する群と、効果を比較するための偽手術群を設け、24週後の運動機能スコアの変化を比較しました。複数の投与量をまとめた細胞投与群と偽手術群の間で、主要評価項目に統計学的な差が認められています。
ただし、運動機能スコアの改善は、すべての患者さんが歩けるようになることや、損傷前の状態に戻ることを意味しません。条件・期限付き承認後の評価も必要で、脳内への移植手術に伴うリスクを含めて判断します。
保険適用・発売・初回投与は別の日
- 初回承認:2024年7月31日、条件・期限付き承認。
- 承認事項の一部変更:2025年12月8日。
- 保険収載:2026年5月20日。収載時薬価は1回分72,716,528円。
- 発売:2026年5月21日。
- 市販後初回投与:2026年10月2日、北海道大学病院。
このように、発売から初回投与までにも期間があります。患者さんの適応判断、施設の準備、細胞の取扱い体制などが必要だからです。北海道大学病院の実施公表は確認できますが、全国の受入施設や待機期間を一律には示せません。
出典:厚生労働省・アクーゴの承認歴、試験・使用方法/厚生労働省・保険収載資料/サンバイオ・発売発表/北海道大学病院・10月2日の治療実施発表
エドスチラドリン|特定の膀胱がんで膀胱温存を目指す遺伝子治療

エドスチラドリンは、BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した、上皮内がんを伴う高リスク筋層非浸潤性膀胱がんが対象です。ただし、BCG療法の再導入が適応とならない患者さんに限られます。
どのように治療する?
筋層非浸潤性とは、がんが膀胱の筋肉の層までは入り込んでいない状態です。治療に用いる遺伝子を膀胱内の細胞に届け、抗腫瘍作用のあるインターフェロンという物質をつくらせる仕組みです。製造販売元はフェリング・ファーマです。
カテーテルを通して膀胱内に投与する治療で、通常は3カ月間隔で使用します。細胞を移植する製品ではありませんが、遺伝子治療製品として再生医療等製品に分類されます。
効果と注意点
国内第Ⅲ相試験の上皮内がんを伴う20例では、初回投与から3カ月までの完全奏効率は75.0%(15例)でした。完全奏効とは、その評価時点で検査上がんが確認されなくなった状態を指し、完治や将来の再発がないことを保証する言葉ではありません。
膀胱温存を目指せる点が特徴ですが、すべての患者さんで膀胱摘除を避けられるわけではありません。治療が効かない場合や再発時の対応を含めた評価が必要です。排尿時の症状、血尿、膀胱のけいれんなどの副作用や、遺伝子治療用ウイルスの取扱いにも注意します。
保険・費用と公表されている施設
2026年5月8日に通常承認を取得し、7月15日から保険適用となりました。収載時薬価は20mL1瓶2,327,036.90円です。これは1瓶の価格で、1回の治療費総額ではありません。通常の投与量は75mLであり、必要な製品量、処置、検査、入院等を含めて確認します。
- 東京国際大堀病院:患者さん向けに本治療の方法・入院方針を案内しています。実際の受入れは適応や診療状況によります。
- 国立がん研究センター東病院:2026年9月の新規採用医薬品として公表しています。採用公表だけでは、投与実績やすべての患者さんの受入れまで確認できません。
出典:PMDA・審査報告書/厚生労働省・保険収載と価格/7月15日適用の薬価基準改正通知/東京国際大堀病院の治療案内/国立がん研究センター東病院の採用情報
その他の注目製品|テロメライシン・アロステム・ジャック・CAR-T療法

再生医療等製品は、整形外科だけでなく、がん、皮膚、眼、遺伝性疾患などの領域にも広がっています。ただし、製品ごとに対象と仕組みが異なります。
テロメライシン注:手術・化学放射線療法が適応とならない食道がん
テロメライシン注は、がん細胞内で増殖するよう改変したウイルスを利用する製品です。2026年6月8日に製造販売承認、8月13日に薬価収載、8月21日に発売されました。製造販売元はオンコリスバイオファーマ、販売は富士フイルム富山化学です。
5月21日は部会での審議日であり、製造販売承認日ではありません。ニュースの「了承」「承認」「発売」を区別して読む例となります。すべての食道がんを対象とするわけではなく、実施施設や使用方法の条件を確認します。
アロステムシート:特定の表皮水疱症による皮膚の傷
2026年4月3日に承認された細胞シート製品です。特定の表皮水疱症に生じる、治りにくい、または繰り返す皮膚のびらん・潰瘍に使用し、皮膚の表面が覆われることを促します。一般的な美容目的の肌再生とは対象も位置づけも異なります。
出典:厚生労働省・2026年4月3日の承認通知/同年7月の保険収載審議
ジャック:膝の軟骨を対象とし、変形性膝関節症にも適応が拡大
ジャックは患者さん自身の軟骨細胞を培養した製品です。2025年5月に変形性膝関節症への適応拡大が承認され、この適応については2026年1月1日から保険が使えるようになりました。
ただし、保存療法で症状が改善しないことや、軟骨欠損面積が2cm²以上であることなどの条件があります。「膝の再生医療がすべて保険適用になった」という意味ではありません。半月板を対象とするセイビスカス注とも治療する組織が異なります。
CAR-T細胞療法やゾルゲンスマも再生医療等製品
CAR-T細胞療法は、患者さんの免疫細胞を加工し、特定のがん細胞を攻撃する働きを持たせる治療です。キムリア、イエスカルタ、ブレヤンジ、アベクマ、カービクティがあり、血液がんの種類や前治療歴などによって対象が異なります。自由診療の免疫細胞療法と同じものとして比較しないようにしましょう。
また、脊髄性筋萎縮症のゾルゲンスマは、原因となる遺伝子の機能を補うことを目指す製品です。2026年には、従来の点滴静注製品とは投与経路・対象年齢が異なる髄注製品が承認されています。
出典:政府会議資料・国内CAR-T製品/ノバルティス・ゾルゲンスマ髄注承認
承認から患者さんが治療を受けられるまで|保険・施設・費用の見方

受診を考える際は、「承認」「保険収載」「供給」「施設・患者条件」の4点を確認してください。一部の準備は並行して進みますが、いずれかが整っていなければ、希望した時期に治療を受けられないことがあります。
- 製造販売承認:どの病気に、どのような方法で使う製品かが定められます。
- 保険収載:保険診療での価格や算定条件が決まります。承認日とは別です。
- 発売・供給:細胞の製造、品質確認、輸送などの体制が整えられます。
- 施設と患者さんの準備:医師の研修、設備、採用手続き、検査・適応判断、入院や手術の日程調整を行います。
条件・期限付き承認は「効果を確認しなくてよい制度」ではない
条件・期限付き承認は、安全性の確認と有効性の推定などを踏まえ、条件と期限を付けて承認する制度です。承認後に追加のデータを集め、有効性等を改めて検証します。報道で「仮承認」と呼ばれる場合がありますが、記事を読む際は正式な承認区分を確認しましょう。
通常承認への移行が自動的に約束されているわけではありません。承認後の評価結果によって販売が終了する例もあるため、過去の承認ニュースだけでなく、現在の状況まで追う必要があります。
数千万円の価格は、そのまま患者さんの自己負担額ではない
ニュースに出る薬価・保険償還価格は、保険診療で製品を評価する価格です。手術、入院、検査などを含む総医療費とは異なり、患者さんの窓口負担とも一致しません。
保険診療の自己負担には、年齢・所得等に応じた高額療養費制度が利用できる場合があります。一方、自由診療の費用や差額ベッド代などは同じ扱いではありません。製品価格だけから負担額を計算せず、加入する健康保険と医療機関の窓口で、治療時点の制度・費用を確認してください。
出典:厚生労働省・条件・期限付き承認の説明/厚生労働省・高額療養費制度/協会けんぽ・支給対象となる費用
再生医療を早く受けたい場合、自由診療も選択肢になる?

病気や病状によっては、現在自由診療で提供されているPRP療法や幹細胞治療などを検討することも、選択肢の一つになり得ます。再生医療等製品の実用化が進んでも、対象患者さんや提供施設が広がるまでに時間を要する製品があるためです。
ただし、自由診療なら同じ治療を早く受けられる、という意味ではありません。使用する細胞、治療する組織、投与経路、科学的根拠が異なります。承認製品の対象から外れることだけを理由に、別の幹細胞治療が適しているとは判断できません。
膝の再生医療でも、製品・治療によって内容が異なる
↓表は横にスライドできます↓
| 比較項目 | セイビスカス注 | 自由診療のPRP療法・幹細胞治療 |
|---|---|---|
| 対象の考え方 | 半月板切除術が適応となる半月板損傷 | 治療計画や病状により異なる |
| 使用するもの | 患者自身の滑膜由来の幹細胞を用いた承認製品 | 自己血液由来のPRP、脂肪等に由来する細胞など、治療により異なる |
| 治療方法 | 半月板の修復処置と関節鏡下の細胞投与 | 関節内注射など。方法は計画ごとに確認 |
| 結果の解釈 | 当該製品・処置の臨床試験に基づいて評価 | 別の製品の成績を、そのまま当てはめることはできない |
たとえば、セイビスカス注の試験で半月板損傷の改善が報告されたとしても、それを「脂肪由来幹細胞の注射でも同じように半月板が修復される」という根拠にはできません。同様に、リハートやアムシェプリの承認を、自由診療の幹細胞点滴の効果を裏づける情報として用いることもできません。
ご自身で調べ、説明を受けてから納得して選ぶ
自由診療を検討するときは、少なくとも次の点を確認しましょう。
- 自分と同じ病気・病状を対象とした研究があるか。使用する細胞や投与方法も同じか。
- 目的は痛みや機能の改善なのか、組織修復なのか。どの指標で効果を判断するか。
- 副作用、感染、採取や投与に伴うリスクと、異常が起きた際の対応は何か。
- 治療費に検査・採取・培養・投与・経過観察がどこまで含まれるか。
- 提供計画と説明同意文書が公開され、実際に受ける治療の内容と一致しているか。
- 他の治療法と比べて何がわかっており、何がまだわかっていないか。
ご自身で十分に情報を調べ、実施医療機関から効果・リスク・費用の説明を受け、納得したうえで治療を選択することが大切です。特に、がんや重症心不全などで、必要な標準治療を遅らせてよいという意味ではありません。
参考:厚生労働省・届出された再生医療等提供計画と説明同意文書
まとめ|今後の実用化・保険適用・治療開始情報を継続して確認

再生医療等製品は、すでに保険診療で使われている製品と、承認後も限られた患者さんへの提供・評価を進めている製品が並存しています。「実用化はまだ先」と一括りにするのではなく、製品ごとの段階を確認しましょう。
今回取り上げた製品では、リハートとアクーゴは保険適用後の初回移植・投与が実施されました。一方、アムシェプリは当初の対象を限定する計画があり、セイビスカス注は保険収載日や一般診療での提供開始を引き続き確認する必要があります。
本記事は、承認や保険適用の発表だけでなく、発売、実施施設、対象患者さんの条件、販売終了・安全性情報も確認しながら更新する方針です。新しい情報を読む際も、「何が、いつ、誰を対象に変わったのか」に注目してください。
よくある質問
Q1.再生医療等製品は、承認されればすぐに保険で受けられますか?
いいえ。保険収載の手続きや供給・施設の準備が必要です。保険適用後も、患者さんの病状や治療歴などの条件を満たす必要があります。
Q2.条件・期限付き承認と通常承認はどう違いますか?
条件・期限付き承認では、有効性の推定等に基づいて条件と期限を付けて承認し、承認後に効果などを改めて検証します。通常承認への移行は自動ではありません。また、通常承認でも調査や適正使用の条件が付くことがあります。
Q3.幹細胞治療は、すべて保険適用になりましたか?
いいえ。保険が使えるのは、収載された製品を定められた条件で使用する場合などです。ジャックやセイビスカス注の承認によって、自由診療のPRP療法や幹細胞治療まで一律に保険適用になるわけではありません。
Q4.ニュースに数千万円とありますが、患者が全額支払うのですか?
保険適用を受ける場合、その製品価格をそのまま全額負担するわけではありません。所得や年齢、治療月、他の診療費などによって負担が変わるため、高額療養費制度も含めて確認してください。
Q5.治験を行った病院なら、現在も治療を受けられますか?
必ずしもそうではありません。治験実施、院内採用、一般診療での治療実施、希望者の受付はそれぞれ別です。本記事の施設名も、公表された事実の範囲で紹介しています。予約・紹介状等は各施設の案内に従ってください。
更新履歴
- 2026年10月11日:承認歴のある製品を一覧化。リハートの9月29日初回移植、アクーゴの10月2日市販後初回投与、ジャックの変形性膝関節症に対する保険適用を反映。セイビスカス注の未確認項目、アロフィセルの販売終了予定、ステミラックの審議予定を明記。
医療機関の皆さまへ|自由診療の再生医療導入に関するご相談
患者さんから再生医療について質問を受けた際は、ニュースで紹介された承認製品と、自院で検討・提供する治療の違いを説明できるようにしておくと、誤解の少ない案内につながります。
グローアップコンサルティング事務所では、PRP療法・幹細胞治療などの導入を検討する医療機関に向けて、提供計画の作成・申請、院内運用、患者さんへの説明体制などの整備を支援しています。
自院で提供できる治療や必要な準備を整理したい院長・事務長の方は、再生医療導入の無料相談をご利用ください。本窓口は医療機関向けの導入相談であり、患者さんの個別の適応判断や承認製品の治療予約は行っていません。
本記事の内容を、院内共有・検討用のPDF資料としてまとめています。
再生医療導入の検討や、提供計画書作成時の参考資料としてご活用ください。
※迷惑フォルダに振り分けられる場合がありますので、ご確認ください。
【2026年最新版】再生医療等製品の承認・保険適用一覧|iPS細胞・幹細胞・遺伝子治療の効果と治療開始時期
無料ダウンロードはこちら
2026年最新の全国の再生医療導入医療機関と対象疾患・治療名のリストを無料でダウンロードいただけます。
※メールアドレスをご入力頂きますと自動返信でダウンロード用リンクが届きます。

★再生医療の導入医療機関リスト2026(無料)★
※迷惑フォルダに振り分けられる場合がありますので、ご確認下さい。
再生医療導入の医療機関リスト(EXCEL)
★無料WEB相談にお申込みの方には以下をご提供中★
- 【再生医療】導入収支シミュレーション表(Excel)
- 【再生医療】貴院周辺のクリニック導入調査リスト(料金設定含む)
- 【PRP治療】キットメーカーリスト
- 【再生医療】主な審査委員会リスト
- 【幹細胞治療】細胞培養委託業者リスト



