腹圧性尿失禁に対するPRP治療とは?効果・国内導入医療機関・申請方法を解説【2026年版】

【医療機関・医師向け】本記事は、腹圧性尿失禁に対するPRP治療の導入を検討する泌尿器科・女性泌尿器科・婦人科の院長、医師、事務長、医療機関経営者に向けた解説です。患者向けの受診案内や、特定の治療を推奨するものではありません。
尿漏れや腹圧性尿失禁は生活の質(QOL)に影響する症状であり、特に女性では出産や加齢、男性では前立腺手術後など、背景が異なる患者が存在します。骨盤底筋訓練や手術などの既存の治療選択肢がある一方、自己血液から調製した多血小板血漿(PRP)を尿道括約筋などに投与する治療が、研究段階の新しいアプローチとして検討されています。
国内でも腹圧性尿失禁に対するPRP治療の提供計画や患者説明書が公開されている医療機関があります。ただし、国内で実施施設が存在することと、標準治療として有効性・安全性が確立されていることは同義ではありません。本記事では女性の尿道括約筋不全(ISD)、男性の前立腺全摘除術後尿失禁も視野に入れ、国内実施施設、公開患者説明書、臨床研究、導入手続きを整理します。
腹圧性尿失禁に対するPRP治療とは?

腹圧性尿失禁の特徴と主な原因
腹圧性尿失禁とは、咳やくしゃみ、運動、重い物を持つ動作などで腹圧が高まった際に、本人の意図に反して尿が漏れる状態です。骨盤底支持組織の機能低下、尿道の支持機構の変化、尿道括約筋の閉鎖機能低下などが関与します。尿意切迫感に伴う切迫性尿失禁とは発症機序が異なるため、問診・診察での病型の確認が欠かせません。
PRP(多血小板血漿)とは
PRP(Platelet-Rich Plasma)は、患者本人の血液を採取し、遠心分離などによって血小板を多く含む血漿成分を調製したものです。血小板由来の成長因子などが組織修復に関係することから、整形外科や皮膚科などの領域で応用されています。腹圧性尿失禁では、尿道括約筋周囲等に局所投与することで組織機能の改善が期待されていますが、実際の作用機序や最適な投与条件は確立されていません。
尿道周囲への投与で期待されること
公開された国内の患者説明書には、採血後にPRPを調製して尿道括約筋周辺へ注入する方法が記載されています。ただし採血量、注入部位、投与回数、外部製造施設の利用有無は提供計画によって異なります。医療機関としては『PRP治療』という名称だけで同一の手技と考えず、使用する加工物と提供計画の内容を確認する必要があります。
女性の腹圧性尿失禁・尿道括約筋不全(ISD)に対するPRP治療

女性の腹圧性尿失禁とISD
女性の腹圧性尿失禁には、出産や加齢などに伴う骨盤底の支持機構の変化に加えて、尿道自体の閉鎖機能が低下する尿道括約筋不全(Intrinsic Sphincter Deficiency:ISD)が関連する場合があります。両者は重なり合うこともあるため、尿失禁の程度や診療上の評価項目を踏まえて判断します。
ISDの患者を対象とする場合の注意点
PRPの局所投与は、尿道閉鎖機能の改善を目指す研究的な選択肢として関心を集めています。しかし、ISDを有する女性に対して一律に効果が期待できるという根拠は十分ではありません。導入を検討する医療機関では、対象患者の選択基準・除外基準、改善を判断する指標、治療後の経過観察、既存治療との関係を提供計画と患者説明書で具体化することが求められます。
治療対象の範囲は提供計画で確認する
腹圧性尿失禁、ISD、混合性尿失禁は同じ意味ではありません。公開情報に「尿失禁」とあっても、対象疾患が明示されていなければ他の病型を含むと判断しないことが重要です。提供計画で対象とする病型と、実際に診療する患者群を一致させる必要があります。
男性の前立腺全摘除術後尿失禁に対するPRP治療

前立腺手術後に尿失禁が生じる背景
男性では、前立腺全摘除術後に尿道括約筋機能の低下などを背景として腹圧性尿失禁が生じることがあります。症状の程度、術後経過、既存の治療歴などにより適切な対応は異なり、骨盤底筋訓練や外科的治療を含む評価が必要です。
女性の研究結果を男性にそのまま適用しない
女性の腹圧性尿失禁を対象としたPRP研究は報告されていますが、その成績を男性の前立腺全摘除術後尿失禁にそのまま外挿することはできません。男女では解剖学的条件や尿失禁の発症背景が異なるためです。男性の術後尿失禁にPRPを導入する場合、対象疾患と実施方法について、該当する臨床研究、提供計画、法令上の手続きの妥当性を個別に確認する必要があります。
男性患者への情報提供
受診者への説明では、PRPの有効性が確立していないこと、予測される負担と不利益、既存治療、費用、治療後の評価計画を丁寧に示すべきです。研究段階の技術であることを曖昧にせず、患者の期待と実際の根拠との間に差が生まれないようにします。
腹圧性尿失禁に対するPRP治療の効果は?国内外の臨床研究を紹介

2026年のシステマティックレビュー
2026年に公表された女性の腹圧性尿失禁に対する注入PRPのシステマティックレビュー・メタ解析では、無作為化比較試験3件と準実験研究5件の計8研究、257人を対象に評価しています。尿失禁症状の評価スコアや生活の質に関する指標では、治療後1〜3か月の短期的な改善が報告されました。
一方、研究間でPRPの調製方法や投与条件、患者背景が必ずしも統一されておらず、長期の持続効果や既存治療との比較には不確実性があります。著者らも、より大規模で標準化された無作為化比較試験と長期追跡が必要と結論しています。出典:Utamaら、Frontiers in Medicine、2026年(PubMed)
2025年の関連レビュー
2025年公表のスコーピングレビューでも、女性の腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱に対するPRPの報告が整理されていますが、研究の規模や設計上の限界から、十分な根拠が確立したとは評価されていません。出典:PRP Therapy for Stress Urinary Incontinence and Pelvic Organ Prolapse(PubMed)
国内での臨床研究
国内では亀田総合病院による、女性の腹圧性尿失禁患者に自己PRPを局所投与し安全性・有効性を検証する非盲検研究がjRCTに登録されています。予定被験者数や対象条件などが公開されている一方、研究への登録と有効性の確認は異なります。出典:jRCTc030230394
安全性の評価で忘れてはならないこと
報告された研究では軽微で自然軽快する有害事象が中心でしたが、少人数・短期間の研究で重大な合併症が報告されなかったことは、危険が存在しないことを意味しません。採血、感染、出血、疼痛、血尿、排尿障害などについて、使用する治療方法に即した説明と有害事象への対応体制が必要です。
【国内事例】腹圧性尿失禁に対するPRP治療を導入している医療機関一覧

e-再生医療の公開情報と患者説明書
厚生労働省の「e-再生医療」では、届出された第三種再生医療等提供計画の一覧と患者説明書を確認できます。以下は公開資料で確認できる事例です。網羅的な全国施設数ではなく、2026年10月時点で参照した公開事例として掲載しています。
↓表は横にスライドできます↓
| 医療機関 | 提供計画番号 | 公開患者説明書の参考料金 | 説明書 |
|---|---|---|---|
| 赤羽ウェルネスクリニック(東京都) | 01C2602029 | 98,000円/回(税抜) | 公開PDF |
| プルージュ美容クリニック(東京都) | 03C2606006 | 98,000円/回(税抜) | 公開PDF |
| そえだ腎・泌尿器科クリニック(愛知県) | 01D2501007 | 500,000円(税込、採血1回・投与2回分) | 公開PDF |
| 皆川クリニック(千葉県) | 01C2512005 | 137,500円/回(税込) | 公開PDF |
※料金は公開患者説明書に記載された参考額です。現行価格・提供状況は各施設にご確認ください。採血回数、PRPの製造方法、投与回数などが異なるため、金額の単純比較は適切ではありません。出典:e-再生医療・第三種提供計画(治療)一覧
治療方法が異なることに注意
例えば、赤羽ウェルネスクリニックの公開患者説明書には、院内で遠心分離してPRPを調製し、月1回・計4回の投与を予定する内容が見られます。一方、そえだ腎・泌尿器科クリニックの公開資料には外部の細胞加工施設へPRP製造を委託する旨が記載されています。皆川クリニックでは、院内調製用キットと尿道括約筋への複数箇所投与が説明されています。
投与時に内視鏡(膀胱鏡)を用いるかどうかにも違いがあります。赤羽ウェルネスクリニックの男性向けページでは、膀胱鏡で尿道の状態を確認しながら外尿道括約筋へPRPを注入する方法が示されています。そえだ腎・泌尿器科クリニックの公開資料でも、男性は内視鏡を用いて投与し、女性は尿道括約筋へ直接注入すると説明されています。皆川クリニックの公開記事にも、内視鏡を使用した投与方法が記載されています。内視鏡の使用有無は対象患者の性別や各施設の提供計画によって異なるため、導入を検討する際は、実際に採用する投与方法・必要な機器・手技の習得状況を個別に確認する必要があります。
したがって、先行施設の治療を参考にする場合でも、採用する製造・投与方法、医師の経験、設備、患者の選択・除外基準に沿って必要書類を新たに整える必要があります。
再生医療導入を検討する泌尿器科医からの相談事例
実際に当事務所でも、再生医療に関心を持つ泌尿器科の先生から相談を受け、腹圧性尿失禁に対するPRP治療をご案内したことがあります。先生からは、既に導入している医療機関の話を直接聞いてみたいという希望があり、先行導入施設をお繋ぎしました。現在も導入に向けた検討が進められています。
新しい治療の導入検討では、公開資料を読むだけでなく、患者選択、手技、設備、フォローアップなどについて先行施設の知見を参考にできることが有益な場合があります。ただし、医療機関同士の情報交換は各施設の了承が前提となります。
関連する婦人科領域のPRP治療
膣内PRPなど女性器周辺の再生医療も公開されていますが、尿道括約筋を対象とする腹圧性尿失禁治療と同一ではありません。たとえばプルージュ リジェン クリニックの女性器周辺に対するPRP治療は、目的・投与場所・対象疾患を個別に確認し、尿失禁PRP治療の実施例とは区別して参照する必要があります。
従来の腹圧性尿失禁治療とPRP治療の違い

保存療法が治療の出発点
女性の腹圧性尿失禁では、骨盤底筋訓練が重要な第一選択の治療です。日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会編集の『女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]』では、骨盤底筋訓練について推奨グレードAとしています。出典:日本排尿機能学会・女性下部尿路症状診療ガイドライン
薬物療法・手術療法との位置づけ
症状や患者背景に応じて薬物療法、尿道スリング手術などの外科的治療が検討されます。男性の前立腺全摘除術後尿失禁では、人工尿道括約筋などの治療選択肢もあります。適切な既存治療と比較し、PRPを『安全で確実な代替治療』と表現することは避ける必要があります。
患者説明時に明確にするべき点
PRPについては、費用が自由診療となること、治療効果が保証されないこと、予想される副作用や通院回数、標準治療の選択肢を明示することが望まれます。診療の場面では、尿失禁の病型診断と既存治療の適応判断を優先し、PRPの位置づけを説明します。
泌尿器科でPRP治療を導入するための申請手続き

再生医療等安全性確保法に基づく対応
国内の腹圧性尿失禁に対する自己PRP治療では、第三種再生医療等提供計画として公開されている事例があります。新規導入を検討する医療機関は、実際の細胞加工物・投与方法・実施内容が法令上どのように位置付けられるかを確認し、必要な施設届出、法令に基づく審査、提供計画の提出などの手続きを行う必要があります。
一般的な導入準備の流れ
- 治療対象、投与部位、PRP調製方法、治療回数などの診療方針を明確にする。
- 院内製造か外部委託かを決め、細胞加工施設の届出・契約など必要な体制を整える。
- 提供計画、治療の詳細、患者説明・同意文書、標準書、管理書類等を作成する。
- 法令で定められた審査を受け、必要な修正を行う。
- 法令上の手順に沿って厚生労働大臣への提供計画提出等を実施する。
- 診療開始後も記録管理、疾病等への対応、定期報告等を継続する。
申請に必要な様式、提出方法、運用は変更されることがあるため、最新の行政案内を必ず確認してください。厚生労働省:再生医療等提供計画の提出等
先行施設の公開資料を参考にする際の注意点
腹圧性尿失禁PRP治療の公開事例は、導入準備に必要な書類構成を検討する上で参考になります。ただし、他院の患者説明書や治療内容をそのまま転記すれば審査に通るわけではありません。PRPの製造方法、採血量、投与回数、医師の実施体制、緊急時対応、提供計画と各種標準書の記載を、自院で実施する治療内容に一致させることが前提です。
腹圧性尿失禁PRP治療の導入に必要な設備・運用体制

PRP調製機器と製造体制
院内製造を選択する場合は、採血、分離・加工、保管、払い出しの一連の工程を、採用する製造方法に沿って設計します。PRP製造に使用するキット・遠心分離機等の仕様や取扱説明書に加え、届出対象施設の構造設備・衛生管理なども確認します。外部委託の場合は、運搬時間・温度・品質管理・製造記録・受け渡し手順が重要です。
泌尿器科領域特有の診療準備
尿道周辺への投与では、投与位置の判断、局所麻酔、注射後の血尿・疼痛・排尿症状などへの対応が問題になります。整形外科のPRP治療と同じ遠心機を使える可能性があっても、泌尿器科領域の手技と安全管理まで共通になるわけではありません。
説明同意・フォローアップ
臨床研究の限界と他の治療選択肢、患者負担、治療後の通院計画を丁寧に説明します。尿失禁症状や生活の質を定量的に追跡できるように、症状スコア・パッド使用状況などの評価方法を事前に統一することも検討されます。効果の確認方法を決めずに自由診療メニュー化することは避けたいところです。
腹圧性尿失禁PRP治療は泌尿器科の新しい自由診療メニューとなるか

患者ニーズへの関心
尿失禁は、身体機能だけでなく外出や仕事、運動、対人交流にも影響することがあります。高齢化が進む中で尿漏れや腹圧性尿失禁への治療ニーズを意識することは、泌尿器科における診療メニューを検討する上で一つの視点です。ただし、将来の患者数やPRPへの需要が必ず増えると断定することはできません。
導入医療機関が少ないことの意味
国内では公開された腹圧性尿失禁PRP治療の事例があるものの、治療方法が標準化され、広く普及している段階ではありません。先行して取り組むことで独自の診療体制を構築できる可能性がある一方、臨床的根拠、患者説明、集患時の表現、安全管理といった負担も伴います。単に競合施設が少ないことを導入理由とするのではなく、診療上の必要性と適切な管理体制を優先することが大切です。
導入前に相談できること
当事務所では、実際に再生医療に関心のある泌尿器科医からの相談をきっかけに、先行導入施設との情報交換につないだ経験があります。こうした情報収集段階を含め、どのような治療方法・製造体制を検討するか、必要な書類や審査への対応はどうするかを整理することが導入判断の出発点となります。
まとめ|腹圧性尿失禁に対するPRP治療の導入を検討する医療機関へ

腹圧性尿失禁へのPRP治療は、女性の尿道括約筋不全(ISD)を含む領域で研究が進み、国内でも公開された提供計画があります。一方、有効性の長期的な裏付け、男性の術後尿失禁への応用、最適な製造・投与条件などには未確立の部分が残ります。
医療機関が導入を検討する際には、医学的な適応判断、先行事例の確認、患者説明、製造・投与体制、再生医療等安全性確保法上の手続きを分けて検討することが望まれます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 腹圧性尿失禁のPRP治療は保険適用ですか?
ここで紹介する国内公開事例は自由診療として説明されており、患者説明書にも自費負担の記載があります。料金・対象条件は各施設の現行案内で確認してください。
Q2. 男性の前立腺全摘除術後尿失禁にも対応できますか?
男性の術後尿失禁は女性の腹圧性尿失禁とは背景が異なります。PRPによる有効性は確立しておらず、男性を対象とする根拠、提供計画の対象疾患と投与方法を個別に確認する必要があります。
Q3. 尿道括約筋不全(ISD)の女性患者は対象になりますか?
ISDは女性の腹圧性尿失禁に関連する病態の一つですが、対象となるかは施設ごとの診療評価と提供計画の選択・除外基準によります。ISDであれば必ず適応となるわけではありません。
Q4. 腹圧性尿失禁へのPRP治療には再生医療等提供計画が必要ですか?
国内では第三種再生医療等提供計画として公開された事例があり、導入する方法に応じた法令上の確認、法令所定の審査・提供計画の提出等が求められます。実際の製造・投与方法を明らかにした上で、個別に手続きを確認してください。
Q5. 既に別領域でPRP治療を実施していれば、新たな申請は不要ですか?
既存の提供計画に含まれない対象疾患や投与方法をそのまま追加することはできません。新たな提供計画が必要か、変更手続きで対応できるかは、既存計画の範囲と変更内容をもとに確認します。
泌尿器科で腹圧性尿失禁に対するPRP治療の導入を検討されている先生方へ
グローアップコンサルティング事務所では、再生医療等提供計画の作成、所定の審査への対応、厚生局への提出準備、PRPの調製体制や導入後の運用に関するご相談を承っています。
腹圧性尿失禁に対するPRP治療についても、国内の公開事例や必要な申請手続きの確認からご相談いただけます。先行導入施設との情報交換については、相手施設の了承が得られる範囲で調整をご相談ください。
導入の可否を決める前の情報収集段階でも、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
参考資料・出典
- 厚生労働省 e-再生医療:第三種再生医療等提供計画(治療)
- 日本排尿機能学会:女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]
- Utamaら(2026):女性腹圧性尿失禁に対する注入PRPのシステマティックレビュー
- PRP Therapy for Stress Urinary Incontinence and Pelvic Organ Prolapse(2025)
- jRCT:亀田総合病院の腹圧性尿失禁PRP研究
- 関連:再生医療等提供計画から見る治療の実施事例
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