【医療機関向け】再生医療で起きた事故事例まとめ|幹細胞治療・NK細胞療法の事例から学ぶ安全管理【随時更新】

最終更新:2026年10月5日

再生医療の導入を検討している医療機関から、「幹細胞治療で死亡事故があったと聞いたが、本当に導入して大丈夫なのか」「CPC(細胞培養加工施設)はどのように選べばよいのか」といったご相談を受けることがあります。

実際、国内ではこれまで、幹細胞治療の投与中の急変・死亡、NK細胞療法後の重篤な感染症、再生医療等提供計画から逸脱した運用、疾病等報告の未実施など、再生医療に関連する事故・健康被害・行政処分が公表されています。

ただし、これらの事例を理由に「再生医療そのものが危険」と捉えるのは適切ではありません。本記事の目的は、再生医療への不安をあおることではなく、過去の事故事例や行政処分から、どのような安全管理が必要なのかを学び、適切な導入・運用につなげることです。

一部の医療機関やCPCで発生した事例の中には、提供計画の遵守、細胞加工の衛生管理、輸送管理、患者選択、救急体制、疾病等報告など、適切な安全管理によって防止またはリスクを低減できた可能性のあるものがあります。

再生医療の導入では、「申請が受理されたら終わり」ではありません。導入後も、実際の運用が提供計画と一致しているか、CPCの品質管理が適切か、異常時に治療を止めて報告できる体制があるかを継続的に確認することが重要です。

※本記事は、厚生労働省等から新たな事故、疾病等、緊急命令、改善命令などが公表された場合、随時情報を追加・更新します。

「本記事の内容をまとめたPDF」及び「再生医療導入医療機関リスト」を、記事の最後からダウンロード(こちら)いただけます。参考資料としてご活用ください。

目次

再生医療では実際にどのような事故・健康被害が起きているのか

再生医療で実際に起きている事故・健康被害の概要

まず、国内で公表されている主な事例を一覧で整理します。ここでは、死亡や重篤な健康被害だけでなく、事故につながり得る重大な不適合や行政処分も含めています。

時期 医療機関・事例 治療・内容 主な事象 主な行政対応等
2010年9月 京都ベテスダクリニック 自家幹細胞の静脈投与 投与後に心停止し死亡。死因は肺塞栓とされたが、幹細胞投与との因果関係は不明 その後の再生医療規制の議論に影響
2023年 幹細胞培養上清液の投与事例 幹細胞培養上清液・エクソソーム関連 死亡事例が報告されたとの学会発表 再生医療抗加齢学会が注意喚起
2024年9~10月 THE K CLINIC/池袋クリニック培養センター 自家NK細胞療法 2名が敗血症でICU入院 提供・製造の一時停止命令、その後改善命令
2025年8月 ティーエスクリニック 慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞治療 投与中に急変し心停止、死亡 提供・製造の一時停止命令
2025年 東京都内医療機関での提供計画逸脱 自己脂肪由来幹細胞点滴 提供計画に記載のないNAD+を混合して投与 重大な不適合として報告
2026年3月 ネオポリス診療所銀座クリニック 慢性疼痛に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞治療 投与中に急変、救急車内で心肺停止し死亡 提供・製造の一時停止命令、後に改善命令
2026年4月公表 トリニティクリニック福岡 慢性疼痛に対する自家脂肪由来間葉系幹細胞治療 少なくとも5名に悪寒・発熱・嘔気等、少なくとも1名が入院 疾病等報告未実施等を受け緊急命令
2026年 銀座鳳凰クリニック 幹細胞・免疫細胞療法等 計画外の医師・医薬品・試薬・対象疾患、疾病等報告未実施等 改善命令
2026年 遺伝子治療を行う33医療機関 遺伝子組換え生物等を用いた医療 カルタヘナ法上必要な承認を受けずに実施 33施設に措置命令

この一覧を見ると、事故の原因や行政が問題視した点は一様ではありません。細胞そのものの性質だけではなく、CPCの製造管理、医療機関の運用、提供計画との整合性、患者への説明、記録、疾病等報告など、複数の要素が関係しています。

2010年|京都ベテスダクリニックでの幹細胞投与後死亡事例

2010年京都ベテスダクリニックでの幹細胞投与後死亡事例

国内の再生医療の安全性を考えるうえで、2010年に京都ベテスダクリニックで発生した死亡事例は重要な事例の一つです。

自家幹細胞を静脈投与後に死亡

報道によると、韓国人男性が自家幹細胞約4億個の静脈投与を受けた後に心停止し、搬送先の病院で死亡しました。司法解剖では死因は肺塞栓とされましたが、幹細胞投与との因果関係は不明とされています。

また、当時の報道では、急変時の応急処置に必要な備品が十分ではなかったことや、患者情報の共有、同意取得、医師間の引き継ぎなど、医療提供体制上の問題も指摘されました。

事故そのものだけでなく「体制」が問われた

この事例から学ぶべき点は、「幹細胞治療は危険」という単純な結論ではありません。再生医療のように新しい治療を提供する場合ほど、急変時の対応、患者情報の共有、説明と同意、実施体制など、通常の医療以上に丁寧な安全管理が必要であるという点です。

2014年には再生医療等安全性確保法が施行され、自由診療で行われる再生医療についても提供計画の作成、認定再生医療等委員会での審査、厚生労働大臣への提出などの枠組みが整備されました。

2023年|幹細胞培養上清液に関連した死亡事例

2023年幹細胞培養上清液に関連した死亡事例

2023年10月、再生医療抗加齢学会は、幹細胞培養上清液を使用した治療に関連して患者が死亡した事象が発生したとの情報を公表し、注意喚起を行いました。

ここで注意したいのは、幹細胞培養上清液やエクソソームは、細胞そのものを患者に投与する再生医療と制度上同じものではないという点です。そのため、本記事では「再生医療関連」の事例として紹介しています。

同学会は、幹細胞培養上清液やエクソソームの静脈投与について、医療水準として未確立であり、有効性・安全性について十分な検討が必要であると注意喚起しています。

この事例も、再生医療という名称やイメージだけで治療の安全性を判断せず、実際に何を投与するのか、どのような品質管理が行われているのか、どの程度のエビデンスがあるのかを確認する必要性を示しています。

参考:再生医療抗加齢学会「幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について」

2024年|NK細胞療法後に2名が敗血症でICU入院

2024年NK細胞療法後に2名が敗血症でICU入院した事例

安全管理を考えるうえで特に参考になるのが、2024年に発生した自家NK細胞療法後の敗血症事例です。

2名が重篤な感染症を発症

2024年9月30日、自家NK細胞療法を受けた2名が帰宅途中に体調不良となり、病院へ緊急搬送され、敗血症と診断されてICUに入院しました。

その後、患者の血液や、投与された特定細胞加工物に関連する検体などから、Pseudoxanthomonas mexicana が検出されました。

厚生労働省は2024年10月25日、THE K CLINICに対して再生医療等の提供の一時停止を、池袋クリニック培養センターに対して特定細胞加工物の製造の一時停止を命じました。

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」

CPCで汚染された特定細胞加工物によるものと考えられた

国立感染症研究所の調査では、CPCで汚染された特定細胞加工物を投与された2名が敗血症を発症したと考えられたとされています。

この事例では、清潔操作や環境管理だけでなく、無菌試験、凍結・解凍工程、記録管理、輸送時の温度管理など、細胞の製造から患者への投与まで一連の管理が重要であることが示されました。

事故防止のために何を見直すべきか

国立感染症研究所は、同様の事例の再発防止として、清潔操作、環境の清掃・消毒、職員研修、信頼できる無菌試験、搬送時の温度管理、治療後の健康観察、逸脱管理、認定再生医療等委員会への迅速な報告、記録と保管などの重要性を挙げています。

つまり、CPCを選ぶ際には、単に「細胞を培養できる」「価格が安い」というだけでなく、どのような品質管理体制を持ち、異常が発生したときにどのように対応するのかまで確認することが必要です。

2025年|自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が死亡

2025年自己脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が死亡した事例

2025年8月には、ティーエスクリニックで慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞治療を受けた患者が、投与中に急変し、急速に心停止して死亡する事例が発生しました。

厚生労働省は、死亡原因が明らかになっていないことを踏まえ、同クリニックによる再生医療等の提供と、コージンバイオ株式会社埼玉細胞加工センターにおける関連する特定細胞加工物等の製造について、一時停止等を命じました。

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」

CPCへの立入検査で複数の品質管理上の問題が確認

その後の厚生労働省による立入検査では、コージンバイオの埼玉細胞加工センターにおいて、原料の規格・受入管理、品質照査、逸脱管理、自己点検など複数の法令違反が確認されました。

特に、清浄度管理区域内で管理基準値を超える菌量が頻繁に検出されていたにもかかわらず、手順書に基づく逸脱処理が行われていなかったことが指摘されています。

死亡原因と管理上の問題は分けて考える

ここで注意したいのは、CPCの管理上の問題が確認されたからといって、それを患者の死亡原因と直結させることはできないという点です。厚生労働省は死亡原因の究明を継続しているとしており、因果関係が確定していない段階で断定することは適切ではありません。

一方で、事故の有無にかかわらず、CPCに求められる製造・品質管理が適切に行われているかは、医療機関側も確認しておくべき重要なポイントです。

2026年|ネオポリス診療所銀座クリニックで幹細胞投与中に死亡

2026年ネオポリス診療所銀座クリニックで幹細胞投与中に死亡した事例

2026年3月10日、ネオポリス診療所銀座クリニックで、自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた慢性疼痛治療を受けていた外国籍患者が投与中に急変しました。患者は救急車内で心肺停止となり、搬送先の医療機関で死亡が確認されています。

厚生労働省は3月13日、同クリニックに対して再生医療等の提供の一時停止等を命じ、細胞の製造に関係していたJASC京都幹細胞培養センターにも製造の一時停止等を命じました。

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」

調査は複数の医療機関・製造事業者へ拡大

その後の調査では、大阪ベテスダクリニック、トリニティクリニック福岡、American Angel Stem株式会社(旧JASC)、韓国RBio Co. Ltd.などにも調査が拡大しました。

2026年7月31日に公表された厚生労働省の資料では、再生医療等提供機関が第三者から提供された「幹細胞投与患者リスト」に従って患者、投与細胞数、投与方法等を決定していたことなどが確認され、医療機関としての主体性が乏しい提供体制が問題視されています。

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令等について」

治療の主体はあくまで医療機関である

再生医療では、細胞の製造を外部CPCへ委託するケースが多くあります。しかし、治療の対象患者を判断し、治療内容を決定し、患者に説明して実施する主体は医療機関です。

CPCや外部事業者から提示された内容をそのまま採用するのではなく、医師が提供計画、患者の状態、選択基準・除外基準等を確認し、自らの判断で提供可否を決定する体制が必要です。

2026年|トリニティクリニック福岡で少なくとも5名に体調不良

2026年トリニティクリニック福岡で少なくとも5名に体調不良が生じた事例

2026年4月、厚生労働省の立入検査により、トリニティクリニック福岡で過去に複数の健康被害が発生していたことが明らかになりました。

厚生労働省によると、2023年5月に自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた慢性疼痛治療を受けた患者のうち、少なくとも5名が悪寒、発熱、嘔気等の体調不良を訴え、少なくとも1名が入院加療を要していました。

しかし、必要な疾病等報告や原因究明等を行わないまま治療提供が継続されていたことが確認され、厚生労働省は緊急命令を発出しました。

参考:厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」

「事故が起きた後の対応」も安全管理の一部

医療では、適切な管理をしていても有害事象を完全にゼロにすることはできません。そのため重要なのは、異常が起きたときに、治療を継続してよいのかを速やかに判断し、必要に応じて提供を停止し、委員会や厚生労働省へ報告し、原因を究明する仕組みを持つことです。

疾病等報告は「問題が起きたことを公表するための手続き」ではなく、患者の安全を守り、同様の健康被害が拡大することを防ぐための仕組みとして理解する必要があります。

死亡事故だけではない|行政処分から見える再生医療の運用上の問題

行政処分から見える再生医療の運用上の問題

再生医療の安全管理を考える際には、死亡事故や重篤な感染症だけを見るのでは不十分です。事故につながり得る「運用のずれ」や法令違反についても、過去の行政処分から学ぶことができます。

銀座鳳凰クリニック|提供計画と実際の運用の不一致

2026年2月、厚生労働省は銀座鳳凰クリニックに対して改善命令を行いました。

立入検査では、提供計画に記載されていない医師による再生医療の提供、提供計画に記載のない医薬品・試薬の投与、提供計画に記載されていない対象疾患への提供、疾病等報告の未実施、定期報告の未実施などが確認されています。

参考:関東信越厚生局「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令について」

福岡MSC医療クリニック|無届提供、救急体制、報告義務など複数の問題

2025年3月には、福岡MSC医療クリニックと同院の細胞培養センターに対して改善命令が出されています。

提供計画の未提出、変更届の未提出、提供計画の不遵守、救急医療体制の未整備、製造・品質管理上の問題、記録作成・保存の不備、疾病等報告の未報告、定期報告義務の不遵守など、複数の問題が確認されました。

参考:九州厚生局「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令について」

提供計画にないNAD+を幹細胞点滴時に使用した事例

2025年には、東京都内の医療機関で、自己脂肪由来幹細胞の点滴時に、提供計画に記載されていないNAD+を混合して投与していた事例も報道されています。

重大な副作用が確認されていない場合であっても、提供計画にない薬剤や試薬を一連の医療行為として使用することは、提供計画との整合性という点で問題になります。

「この薬剤は一般的に使われているから」「少量だから」と現場判断で追加するのではなく、提供計画にどのように記載され、委員会でどのように審査されているかを確認する必要があります。

遺伝子治療を行う33医療機関にカルタヘナ法上の措置命令

2026年5月27日には、厚生労働省と環境省が、遺伝子組換え生物等を用いた医療を行っていた全国33の医療機関に対して、カルタヘナ法に基づく措置命令を行いました。

対象となった医療は、カルタヘナ法上の第一種使用等に該当し、本来は主務大臣の承認が必要でしたが、必要な承認を受けずに実施されていました。

参考:厚生労働省「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づく措置命令について」

これは事故そのものではありませんが、再生医療や遺伝子治療では、再生医療等安全性確保法だけを確認すればよいとは限らないことを示す事例です。

実際の導入支援でも「提供計画と現場運用のずれ」は起こり得る

再生医療の提供計画と現場運用のずれ

ここまでの行政処分を見ると、「特殊な医療機関だけの問題」と感じるかもしれません。しかし、再生医療の導入支援を行っていると、重大事故には至っていなくても、受理された提供計画と実際の現場運用にずれが生じているケースを確認することがあります。

実際に当事務所が確認したケースでは、厚生局に受理されていた提供計画や関連書類に、使用する培地や薬剤の名称・型番まで記載されているにもかかわらず、実際の運用では別の製品が使用されていました。

現場では「同じような製品だから問題ないだろう」と考えてしまうことがあります。しかし、提供計画は、その内容について認定再生医療等委員会で安全性や科学的妥当性を含めた審査を受けたうえで提出されています。

したがって、使用する薬剤、培地、キット、細胞加工方法、投与方法、実施医師、対象疾患などに変更がある場合は、現場だけで判断せず、変更手続きが必要かを確認することが大切です。

再生医療では、「申請時の書類」と「実際の治療」を一致させ続けることが、安全管理の基本の一つです。

関連記事:【再生医療】PRP・幹細胞治療の導入手続きと費用について解説

事故事例から分かる|医療機関が確認すべき7つの安全管理ポイント

医療機関が確認すべき7つの安全管理ポイント

過去の事例を踏まえると、再生医療を導入・運用する医療機関では、少なくとも次の7点を確認しておくことをおすすめします。

1.「提供計画が受理されたから安心」ではない

提供計画が受理されたことは、導入手続き上の重要なステップです。しかし、その後の運用まで自動的に適正になるわけではありません。

実際の診療で使用している薬剤、培地、機器、投与方法、実施医師、対象疾患などが、提出した提供計画や添付書類と一致しているかを定期的に確認する必要があります。

2.CPCを価格だけで選ばない

幹細胞治療や免疫細胞療法では、細胞培養を外部のCPCへ委託するケースがあります。

CPCを比較する際、培養費用はもちろん重要ですが、価格だけで決めるべきではありません。

当事務所では、CPCを選定する際に、主に以下の点を確認しています。

  • これまでの培養実績
  • 製造・品質管理体制
  • 無菌試験などの検査体制
  • 異常・逸脱が発生した場合の対応
  • 細胞の輸送時間・温度管理
  • 医療機関とCPC間のやり取りを定めたマニュアルの精度
  • 導入時のレクチャー・研修体制
  • 導入後のフォロー体制

CPCは単なる「細胞の外注先」ではなく、治療の安全性を支える重要なパートナーとして選定することが大切です。

3.輸送時間・輸送温度まで確認する

細胞は、CPCで適切に製造されていても、医療機関へ到着するまでの輸送条件が適切でなければ品質に影響する可能性があります。

どの温度帯で、どの容器を使用し、何時間以内に輸送するのか。受領後はどのように保管し、どのタイミングで投与するのか。これらが特定細胞加工物概要書や標準書等と整合しているかを確認する必要があります。

4.医療機関とCPCの役割を明確にする

再生医療では、脂肪や血液の採取、CPCへの引き渡し、細胞加工、輸送、受領、保管、投与と、複数の工程があります。

そのため、医療機関とCPCの間で「誰が、いつ、何を確認するのか」が曖昧だと、確認漏れが起こりやすくなります。

当事務所がCPC選定時に「医療機関とCPCとのやり取りマニュアルの精度」を重視するのもこのためです。

5.導入時のレクチャー・研修を重視する

書類上の手順が整っていても、現場スタッフが理解していなければ適切な運用にはつながりません。

細胞の受け取り方、保管、投与前確認、緊急時の連絡先、記録方法などについて、医師だけでなく実際に関わるスタッフまで含めたレクチャーが必要です。

導入後に担当者が変わることもあるため、継続的な研修・フォローが受けられるかもCPC選定のポイントになります。

6.疾病等が発生した場合に「止める・報告する」仕組みを決める

患者に想定外の症状が生じた場合、誰が管理者へ報告するのか、誰が提供継続の可否を判断するのか、認定再生医療等委員会や厚生労働大臣への疾病等報告が必要かを誰が確認するのかを事前に決めておくことが大切です。

「症状が改善したから報告しなくてよい」といった現場判断ではなく、再生医療等安全性確保法と施行規則に基づいて判断する必要があります。

7.救急対応・連携医療機関まで事前に確認する

特に細胞の静脈投与では、投与中・投与後に急変が起きる可能性を想定し、院内の救急対応体制や近隣医療機関との連携体制を整えておくことが重要です。

安全管理は、事故が起きないことを前提にするのではなく、万一の際に患者を守れる体制をあらかじめ準備することまで含みます。

再生医療の事故を知ることは、導入を諦める理由ではない

再生医療の事故を知ることは導入を諦める理由ではない

ここまで複数の事故や行政処分を紹介しましたが、この記事を読んで「再生医療は危険だから導入しない方がよい」と考えていただきたいわけではありません。

今回紹介した事例は、再生医療を実施するすべての医療機関やCPCで発生しているものではありません。一部の事例をもって再生医療全体を危険と評価することは適切ではありません。

一方で、医療行為である以上、リスクを完全にゼロにすることもできません。

大切なのは、過去の事故事例について、単に「怖い事故があった」と捉えるのではなく、どこに問題があったのか、自院では同じことが起きない仕組みになっているかという視点で確認することです。

例えば、2024年のNK細胞療法後の敗血症事例からは、CPCの衛生管理や無菌試験、輸送管理、逸脱管理の重要性を学べます。トリニティクリニック福岡の事例からは、疾病等が発生した後の報告と原因究明の重要性が分かります。銀座鳳凰クリニックの事例からは、提供計画と実際の診療を一致させ続ける必要性が分かります。

事故を知ることは、再生医療への参入を萎縮させるためではなく、より安全に導入するための教材として活用すべきだと考えています。

再生医療導入では「申請」と「運用」をセットで考える

再生医療導入では申請と運用をセットで考える

再生医療を導入する際、どうしても認定再生医療等委員会への申請や厚生局への提供計画提出に目が向きがちです。

しかし、安全に治療を継続するには、申請前後を含めた運用設計が必要です。

導入前には、治療内容、CPC、委員会、救急体制、院内オペレーションを決める。

導入時には、医師・スタッフへの研修、細胞受領から投与までの手順、記録方法、緊急時の連絡体制を確認する。

導入後には、実際の運用と提供計画の整合性を確認し、必要に応じて変更手続きを行い、定期報告・疾病等報告を適切に実施する。

この一連の流れまで設計して初めて、再生医療導入の安全管理が機能します。

厚生労働省も2026年7月、「再生医療等の適切な提供に係る自己点検について」を公表するなど、提供開始後の継続的な確認を重視しています。

参考:厚生労働省「再生医療等に関する更新情報」

まとめ|事故事例を教訓に、安全な再生医療導入につなげる

事故事例を教訓に安全な再生医療導入につなげる

再生医療では、これまでに死亡、重篤な感染症、健康被害、提供計画からの逸脱、疾病等報告の未実施など、さまざまな事例が公表されています。

一方で、これらの事例から学ぶべきことは「再生医療を行わない方がよい」ということではありません。

提供計画を守ること、CPCの品質管理を確認すること、細胞輸送を適切に管理すること、医療機関として主体的に患者を診断・選択すること、スタッフ教育を行うこと、疾病等が発生した際に適切に止めて報告すること。こうした一つひとつの安全管理を積み重ねることが重要です。

特に再生医療は、申請時に多くの書類を作成するため、「受理されたことで安心してしまう」ということが起こり得ます。しかし、本当に重要なのは、その提供計画どおりの治療が現場で継続されているかどうかです。

事故事例を必要以上に恐れるのではなく、過去の事例を教訓として、自院の安全管理を確認しながら導入・運用していくことが、患者と医療機関双方にとって大切だと考えます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 再生医療では死亡事故が起きているので危険なのでしょうか?

死亡事例は実際に公表されていますが、一部の事例をもって再生医療全体を危険と評価することは適切ではありません。事例ごとに原因や背景は異なり、因果関係が確定していないケースもあります。大切なのは、過去の事例から安全管理上の課題を学び、提供計画の遵守、CPCの品質管理、救急体制などを整えることです。

Q2. 再生医療等提供計画が受理されれば、安全性は保証されますか?

提供計画の受理は重要な手続きですが、その後の安全性が自動的に保証されるものではありません。実際の治療内容や使用する薬剤・培地、実施医師、投与方法などが提供計画と一致しているかを継続的に確認する必要があります。

Q3. CPCを選ぶ際は何を確認すればよいですか?

価格だけでなく、培養実績、品質管理、無菌試験、輸送時間・温度管理、逸脱発生時の対応、医療機関との連携マニュアル、導入時研修、導入後フォローなどを総合的に確認することをおすすめします。

Q4. 再生医療提供後に患者の体調不良が発生した場合はどうすればよいですか?

まず患者の安全確保と必要な診療を優先し、そのうえで再生医療等安全性確保法等に基づき、管理者・実施責任者への報告、認定再生医療等委員会や厚生労働大臣への疾病等報告の要否を確認します。必要に応じて治療提供を停止し、CPCと連携して原因究明を行う体制も重要です。

Q5. すでに再生医療を導入している場合も運用を確認した方がよいですか?

はい。提供計画提出後に、医師、スタッフ、使用薬剤、培地、キット、CPC、輸送条件、治療手順などが変更されていることがあります。提供計画と現在の運用が一致しているかを定期的に確認し、必要な変更届・変更申請が行われているか確認することをおすすめします。

再生医療の導入・運用について無料相談を承っています

再生医療を安全に導入・運用するには、再生医療等提供計画の申請だけでなく、CPC選定、院内オペレーション、スタッフ研修、救急体制、定期報告、疾病等報告まで含めて考える必要があります。

PRP幹細胞導入支援/申請代行センターでは、これから再生医療を導入する医療機関だけでなく、すでに導入しているものの「現在の運用が提供計画と一致しているか確認したい」「CPCを見直したい」「変更手続きが必要か分からない」といったご相談にも対応しています。

事故事例を理由に再生医療導入を過度に恐れるのではなく、必要な安全管理を理解し、自院に合った体制を整えたうえで導入・運用していくことが大切です。

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再生医療導入の検討や、提供計画書作成時の参考資料としてご活用ください。

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泉山秀和
再生医療導入コンサルタント、(厚労省認定)再生医療審査委員会委員メンバー
再生医療導入の専門コンサルタントとして、PRP療法・幹細胞治療・免疫細胞療法など、全国で延べ150件以上の申請サポートに携わり、医療機関の皆様をご支援しております。
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